「ドラマ版のファンとして望んでいた展開ではなかった」Dr.コトー診療所 中屋秀樹さんの映画レビュー(感想・評価)
ドラマ版のファンとして望んでいた展開ではなかった
前半はドラマ編の顔見せも兼ねた展開で、懐かしく鑑賞していました。ただ、肝心のストーリーが・・・。成長した剛洋が登場してきたあたりから、なんというかモヤモヤしてきました。剛洋はコトー先生に憧れて、コトー先生のようになりたくて上京し、医師を目指していた。それが大学を中退して医師にはなれず、クリニックで事務のバイトをしていた。なんで?なんでそんな展開にするの?医師になって島へ帰って、コトー先生の後を引き継ぐような展開を期待していました。これでは映画を見た後に、もう一度ドラマ版を見返す気にならない。そりゃ医師になるのは簡単なことじゃない。挫折や苦悩もあるでしょう。でも、こういう設定はないと思いました。コトー先生が今までの無理がたたり、病気になってしまう。島のみんながコトー先生にばかり頼り切った結果、コトー先生が倒れてしまったという設定も悪くはない。でも、それが急性骨髄性白血病などどいう重病である必要はないし、それならそれで、今度は医師になった剛洋がコトー先生を助けるような展開にはできなかったのか? 島が嵐になり、大勢の島民がケガをして診療所に駆け込んでくる。これ映画版に必要?ドラマ版で見たし。白血病になり、安静にしてなくてはならないコトー先生、でもやっぱり医師なので、島民のために自らの体を投げうって手術や診察にあたる。全員助けたいというコトー先生の変わらぬ思いはわかるけど、なんとなく感動の押し付けのような気がしてならなかった。ドラマを映画化すると、色々詰め込み過ぎてしまう。その典型的な失敗例だったと思う。わたしは剛洋が医師となって島に帰ってきて、病に倒れたコトー先生を救う(恩返しする)、彩佳とコトー先生の結婚に至るまでの話、そして彩佳が出産する感動のシーン。この3つが見たかったです。医療物に山場は必要だけど、ちょっとドラマ版と違う感じがしてならなかった。最後の30分はコトー先生と矢吹丈がかぶって見えました。Dr コトー診療所ってこういう話じゃないでしょ?それが素直な感想です。唯一・・新キャストの髙橋海人さん演じる織田は良かった。彼の役どころは、今回の映画版には良い意味でスパイスになっていたと思います。