劇場公開日 2026年1月1日

「新年早々、我らがポール・W・S・アンダーソン夫妻が観客の知能指数をゼロにしに来た件について」ロストランズ 闇を狩る者 こひくきさんの映画レビュー(感想・評価)

1.5 新年早々、我らがポール・W・S・アンダーソン夫妻が観客の知能指数をゼロにしに来た件について

2026年1月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

新年早々、初詣の代わりに映画館へ特攻し、我らがポール・W・S・アンダーソン監督とミラ・ジョヴォヴィッチ夫妻による最新の「夫婦漫才」こと『ロストランズ 闇を狩る者』を観てまいりました。

結論から申し上げますと、「期待を裏切らない、いつものポール・W・S・アンダーソン」であり、同時に「新年早々、観客のSAN値とチケット代をゴリゴリ削りに来る愛すべき駄作」でありました。脚本の荒さ加減が並大抵ではありません。「観客を置いてけぼりにする」という点において、今年これを超える作品に出会える気がしません。

■ 開始早々に「説明責任」を放棄する潔さ
まず冒頭からして凄まじい。文明が崩壊した世界? 謎の魔女? そんなもん「見ればわかるだろ」と言わんばかりのストロングスタイルで、世界観の説明が一切ありません。普通の映画なら「なぜ世界がこうなったか」「魔女とはどういう存在か」というチュートリアルがあるはずなんですが、この監督に関しては「俺の嫁(ミラ)がカッコよければそれでいい」という確固たる信念があるため、ノイズになる設定説明は全カットなんですね。結果として、観客は映画開始早々、「レベル99のキャラがいきなり知らないマップで無双しているのを、横で指をくわえて見せられる」という放置プレイを強要されます。これ、一見さんお断りにも程があるでしょう。

■ 脚本が「荒い」のではなく「無い」疑惑
「脚本が荒すぎる」というご指摘、まったくもってその通りなんですが、個人的には「これ、撮影現場でその場のノリで撮ってないか?」と疑いたくなるレベルでした。原作者はあの『ゲーム・オブ・スローンズ』のジョージ・R・R・マーティンなんですが、彼特有のドロドロした政治劇や人間ドラマは綺麗さっぱり削ぎ落とされ、残ったのは「魔獣」「変身」「爆発」という男児の夢セットのみ。主人公グレイ・アリスの能力に至っては、定義がフワッフワです。「対価が必要」とかそれっぽいことを言いつつ、ピンチになると都合よく新技が出る。「ご都合主義」という言葉が服を着て歩いているような展開に、観客の脳内では常に「???」という弾幕が流れ続けることになります。

■ 世界観の解像度がプレステ2
VFXに関しても、予算が尽きたのか、あるいは監督の美的センスが90年代で止まっているのか、全体的に「合成っぽさ」が凄い。壮大なファンタジー世界を描こうとしているのは分かるんですが、画面から漂うチープさが半端なく、没入しようとする観客の足を全力で引っ張ってきます。特に、案内役のデイヴ・バウティスタとの関係性も、バディものとしての積み上げがないまま「なんとなく良い雰囲気」になるので、感情移入する隙間がありません。「ロストランズ」って、脚本の整合性が失われた地って意味だったんでしょうか。

■ 総評:実家のような安心感のある「地雷」
散々書きましたが、じゃあこの映画を見る価値がないかと言うと、「ポール・W・S・アンダーソン映画に何を求めているか」によります。
緻密なストーリーや感動を求めて行くと、間違いなく内臓が破裂するほどのストレスを受けます。しかし、「嫁を世界一美しく撮るためだけに数十億円を使い込む監督の狂気」や、「IQを2くらいまで下げて、ただ画面が光ったり爆発したりするのを眺める時間」を求めている人にとっては、これ以上ない極上のエンターテインメント(あるいは劇薬)と言えるでしょう。

これから観に行く奇特な方は、ぜひ「細かいことを考えたら負け」という禅の心を持って、劇場へ足を運んでください。私はもうお腹いっぱいです。

こひくき
PR U-NEXTなら
映画チケットがいつでも1,500円!

詳細は遷移先をご確認ください。