劇場公開日 2023年1月13日

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「フィリピンハーフ家庭の描写がリアル」世界は僕らに気づかない Omiさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0フィリピンハーフ家庭の描写がリアル

2025年6月17日
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鑑賞方法:VOD

泣ける

知的

斬新

私が日本人の父とフィリピン人の母のもとで育ったハーフなので、
レイナをはじめとするフィリピン人達の言葉遣いや、純悟とのやり取り、家の中の雰囲気や出来事など、色々なことが懐かしく感じました。
しかも描写がやたらリアルです。
監督は調べてみた限りでは純日本人のようですが、フィリピンハーフの人達へ綿密な取材をしたに違いないと思うくらいのあるあるの連続と、高い再現度でした。

この作品は「外国人」と「LGBT」の二つが、双璧と言えるくらいの軸となるテーマであると感じました。
レイナ目線で言えば、日本で生きる外国人が経験する生活の苦しさ、異文化で生きていくこと、一部の人たちから受ける差別的な言動が描かれていて、
純悟目線で言えば、ハーフという周りとは違う背景をもって日本で生きていく上でのアイデンティティの苦悩、学校で受けるいじめ、家庭問題が描かれています。
そして、その親子もまた何度も衝突し合うのです。
耐えない喧嘩の中に、それぞれの生々しい愛情が見え隠れする所が、観る方の心に訴える人間ドラマでした。
「愛」って、それが真剣であればあるほど、いつも温かくて気持ちの良いものではない。そんなことを思い出しました。

一方、息子の純悟がハーフであると同時にゲイでもあり、
物語後半から登場するアセクシャルの女の子、
パートナーシップや同性カップルの生活など、LGBT要素も柱のテーマにしているように感じましたが、
こちらは上記の外国人やハーフの柱に比べるとやや弱く感じました。
LGBTの人物や価値観、社会制度が色々と登場はしますが、それに対してキャラクターが苦悩や成長を経験するとか、そういった描写はなく、
「存在することが特別ではなく、当たり前のもの」として描かれているように感じました。
実際、LGBTへの偏見や差別の描写は、子供の悪ふざけ以外ではほぼほぼありせん。
むしろ、ゲイの純悟に対して周りの人物が驚いたりすることもなく、誰もがすんなりと、当たり前のように受け入れます。
そういう意味では少し不自然であり、ファンタジックです。
ここら辺は現代のリアルというよりは、理想の社会を描いたように感じました。
こんな社会になるといいな、という制作者の願いの投影なのでしょうか。

Omi
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