「注文の多い料理店。 このシェフの正体は、まさかGブリのM崎駿監督…?」ザ・メニュー たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
注文の多い料理店。 このシェフの正体は、まさかGブリのM崎駿監督…?
離島に建つ高級レストランにおいて、一流シェフから招待客たちにサーブされる恐怖のメニューを描いたブラック・コメディ。
高級レストラン「ホーソン」の総料理長、ジュリアン・スローヴィクを演じるのは『ハリー・ポッター』シリーズや『007』シリーズの、名優レイフ・ファインズ。
招待客のひとりでタイラーの連れ、マーゴット・ミルズを演じるのは『アンブレイカブル』シリーズや『ラストナイト・イン・ソーホー』の、名優アニャ・テイラー=ジョイ。
招待客のひとりでスローヴィクの熱烈な信奉者、タイラー・レッドフォードを演じるのは『X-MEN』シリーズや『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のニコラス・ホルト。
ヴォルデモートが取り仕切るレストランがまともな訳がないっ!…という説得力。レイフ・ファインズを配した時点で、この映画の勝利は約束された様なものである。
シェフが怨みのある人間を自分のレストランに集め、全員を血祭りにあげるという設定はそこまで目新しいとは言えないが、斬新なのは全然シェフの側に肩入れ出来ないという点。「金田一少年の事件簿」(1992-)とかなら、被害者側がクズすぎて犯人に同情したりしてしまうのだが、この映画に関しては完全に逆恨みである。レイフ・ファインズの重厚な演技でなんとなく納得させられそうになるが、いやお前が店畳んで田舎にダイナーでも開けば全て解決する話じゃねーかっ!!
プロデューサーがアダム・マッケイ&ウィル・フェレルの「ファニー・オア・ダイ」コンビということからもわかる通り、本作は完全にコメディである。R15指定ということもあり、凶悪な殺人鬼が客を食材として料理しちゃう『人肉饅頭』(1993)みたいなカニバリズム映画かと思っていたのでそこは拍子抜けしてしまった。そういう映画だと期待した自分が悪いのだが、だってシェフがヴォルデモートなんだからしょうがないじゃんねぇ。
「ヤツらは情報を食ってるんだ」とは、人気グルメ漫画「ラーメン発見伝」シリーズ(1999-)のキャラクター、“ラーメンハゲ“こと芹沢達也のセリフだが、本作では味にも料理にも興味がないが金だけは持っているという“情報喰い“共が一斉処分される。その容赦の無さはブラック・コメディと言えるのかどうかもギリギリで、大半の観客はドン引きしてしまうことだろう。
そんな中で一服の清涼剤となるのがスローヴィクの信奉者であるタイラー。スローヴィクのスピーチに涙を浮かべ、困惑したり恐怖したり逃げ出そうとしたりする客たちを尻目に「この料理の隠し味は…」などと宣う生粋のサイコバカである。演じるニコラス・ホルトは、『怒りのデス・ロード』(2015)でもカリスマを信奉する若者を演じている。権威に騙されやすい未熟者を演じさせれば天下一品で、今回もやはり素晴らしかった。本当にそういうカルト信者に見えるもん。彼がコメディリリーフとして立ち回ってくれたおかげで、この映画はギリ喜劇として成り立っていた様な気がする。だからこそその最期が…😢
アニャ・テイラー=ジョイ演じるマーゴも良い。やたらとペラペラしたイブニングドレスとそれに不似合いな革ジャン、そして個性的すぎるルックスが彼女の異邦人感を見事に表現しており、他の登場人物とは住む世界が違うからこそ彼女だけが生き残れるという展開に説得力が生まれています。
本作は全体的に撮影が美しいが、特にアニャが綺麗。この人こんなに美人だったっけ?女優が綺麗に撮れている、それだけで映画は合格💮
これほど撮影が美しいのに、出てくる料理がどれも不味そうというか味気なさそうなのも好印象。高級料理が全然美味そうに見えないからこそ、最後のチーズバーガーが対照的にバカ美味そうに見える。
結局はジャンクフードが1番美味いんだという、グルメブームに水を差す身も蓋もない落とし所はなかなかアナーキーで気にいっている。「テイクアウト」すれば生きて帰れるって、なんか一休さんのとんち合戦みたいだなとは思ったけど。まぁでもそこも含めて、皮肉の効いた良い風刺劇だったかな。
※グルメブームをアイロニカルに描いたサタイアではあるが、やはりこれを映画で表現している以上、このレストランは「映画」の比喩なのだろう。独裁者の様に立ち振る舞うスローヴィクは映画監督で、その下のスタッフたちは畏れと尊敬を抱きながら彼に絶対服従を誓っている。映画評論家は殺す、下手な役者は殺す、口出ししてくるプロデューサーも殺す、内容を理解しようともしない観客も殺す、何でもかんでも全肯定する信者も殺す、作れもしねーくせに利いた風な口をきく奴は首くくって死ね。うーんこう書き出すと、この映画で描かれていることのヤバみが強くなる。下手な感想はつぶやけないね。
にしてもホーソンの共産主義的統率…まさかスローヴィクのモデルはGブリのM崎監督なのではっ!?
