「あえて書かないマジックと分子ガストロノミーのフュージョン」ザ・メニュー R41さんの映画レビュー(感想・評価)
あえて書かないマジックと分子ガストロノミーのフュージョン
料理・特別な料理を出すレストランとサイコ・サスペンスの「融合」
レストランのある場所がボートでなければ行けないという設定は、最初から何かあることを窺わせている。
本日のお客様がどのような人物なのかを隅々まで調べてある。
その証拠写真のように焼き上げられたトルティーヤ
逃げても無駄だということまで丁寧に教えられる。
さて、
副料理長がメニューの題目になってしまったのは何故だろう?
単なるサイコとしての演出か?
「混乱」
このネーミングは料理人から見たもので、そのサイコ集団に違和感を持った副料理長が混乱したことで彼がメニューに加えられたのだろう。
しかし料理人たちを操る手法は最後まで明かされることはなかった。
集団催眠のような手法
携帯の電波が届かない場所
支配者であるシェフ
タクシー運転手が言う「ハンドルを持ったら私が社長」と同じことなのか?
彼の思想
与える側と奪う側
今宵集められた客人はすべて奪う側
しかもシェフから何かを奪った者たち
招待状と秘密厳守
島に行くまで決して行くと言ってはならない
そして全員が「死ぬ」ことになっていることも。
それが本気ではないことなどは社会的な常識のはず、だった。
でも実際その通りだった。
必ず起きてしまうイレギュラー
マーゴという招かれざる客人
さて、
マーゴを誘ったタイラー
彼は何故首を吊って死んだのだろう?
あまりに突拍子もないプロットだが、彼はサラリーマンの代表だろうか?
取れない責任と自殺という逃避
仲間として温かく迎え入れられたのに、最低の評価
そしてその責任
タイラーもまた狂っていたのだろうか?
また、
マーゴというイレギュラーは、サイコシェフでさえも料理できなかったということだろうか?
彼女は「経験」という名の「春」を男に与えながら、同時に搾取される側でもあった。
そこにシェフのこだわりがあったのだろうが、サイコ故理解不能なところだ。
無線で呼ばれた湾岸警備隊までシェフに取り込まれている世界。
知られざる世界
そこに見え隠れするエプスタイン島
この作品の発想着眼点かもしれない。
さて、
この作品には完全さが見られない。
完全さがない点をシェフもつぶやいていた。
完全なものなどないことを、あえて物語として出すところにこの作品のエンターテインメント性を表現したのかもしれない。
そう考えると、基本部分だけが明確であって、細部には粗が目立つ。そこもまた表現としたのかもしれない。
チーズバーガー
シェフの原点
彼のシェフとしての始まりだった味
彼の作っている姿を見学する料理人たち
料理に愛をこめていると言ったシェフに「愛ではなく執着」だと切って捨てたマーゴ。
しかしそのチーズバーガーの味は本物だった。
「食べきれないから持って帰りたいんだけど?」
マーゴはいつそれを思いついたのだろう?
シェフの真似をして手を叩く合図は、集団催眠を掛ける合図だったのか?
シェフはマーゴに催眠術を掛けられたのだろうか?
物語の構成に必要な部分が明かされることなく終了する物語。
声を上げない客たちの不思議
湾岸警備隊が来ても助けを叫べない客たち
彼らも全くよくわからない人々だった。
しかし全体的には面白さがあった。
深くえぐる必要がない深さがあるように感じた。
見せないことで考えさせる手法。
そんな単純なマジックと化学的料理のフュージョン
この辺がウィットが効いていた部分だろう。