「料理の狂人」ザ・メニュー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
料理の狂人
外界と切り離された孤島で幕開くのは、殺人事件。
しかしこちらは、その孤島にあるレストランで名シェフによるフルコース料理。
いやはや、何て贅沢。食べる前から美味。
が、何かがお・か・し・い…。
予約を取るのも困難なある孤島のレストラン。その名を轟かすカリスマシェフ、スローヴィクが腕を振る舞うフルコース料理。
船着き場に、マーゴとタイラーの若いカップル。タイラーは食通でスローヴィクに心酔しており、遂に食べれる時が来て興奮治まらない。
一方のマーゴは特に興味の無い様子。
招待された客は著名な料理評論家や映画俳優など、金持ちやセレブ。如何にここのシェフとレストランが“特別”なのか窺い知れる。
島に着き、給仕係のエルサが受付。何故かマーゴの名前が違う。タイラーが急遽連れてくる同伴者をマーゴに変更したらしい。
レストランに向かいながら、エルサが海岸や畑や養鶏場や薫製場を紹介。ここで作られる料理の材料は全てこの島で採れるもの。こういう所まで見せ、やはり他とは違う。
レストラン“ホーソン”に到着。外を一望出来るお洒落な内装で、厨房とも隔たりなく、スタッフが料理を作る様が見れる、何もかもがエンタメや一大ショー的。
程なくして、スローヴィク登場。ゲストたちに挨拶。
料理の栄養素、材料となる動植物や生態系について語る。カリスマシェフならでは。さらに、
「料理を食べないで下さい。味わって下さい」
分かる人には分かる哲学的な事を言ってるように思えるが、何処か不敵な笑み…。
そしてディナーが始まった。
1品目は、島を表したような料理。もはや芸術作品。タイラーに至っては、感涙。
2品目はパン料理なのだが、パンの無いパン料理。これも何かの演出…? 分かる人には分かる…?
3品目は、タコス料理。スローヴィクが同席している母親を紹介し、幼少時を語る。思い出の味と思いきや、衝撃の話に…。
さらにトルティーヤには、ゲストたちのある秘密が…。
何か、ヘン。マーゴは出される料理が口に合わず、鼻に付き、ほとんど食べない。
そんな異様な雰囲気が決定打となったのは、4品目。副シェフが作ったのだが、“後悔”と共に拳銃自殺。
場は衝撃、騒然、戦慄…!
それでも当たり前のように進められていくスローヴィクのフルコース料理。
一体、このレストランは…?
スローヴィクの目的は…?
ゲストたち各々の秘密と共に、振る舞われていく…。
贅沢で豪華な料理を楽しむ場ではなかった。
見ていると薄々と、ゲストたちに何かある事は察し付く。
その店の評判を上げるも下げるも料理評論家の声一つ。
偉そうなスポンサー連中。
シェフと友人だと嘘つき見栄を張る実は落ち目の映画俳優。
穏やかそうな老夫婦に至っては11回も来店しているのに何を食べたか覚えていない。
これは作る側にとっては屈辱。こんな奴らに左右されて利用されてたまるものか。
ゲストたちの前でオーナーを“料理”し、私は自由だ。
“料理の鉄人”ならぬ“料理の狂人”。
ゲストたちも揃いも揃って、訳あり、傲慢。
そんな奴らに、“制裁”というフルコース。締めはその命を持って…。
恐怖のフルコース・ディナーだった…!
マーゴとタイラーは…?
自称食通のタイラー。その料理の知識を買われ、何か料理を作る事に。
思わぬ事に手が震え、旨く作れなかった料理の味は言うまでもない。スローヴィクに酷評され、ショックを受けたタイラーは…。
マーゴは老夫婦の夫と面識あり。実はマーゴは娼婦であった。
タイラーはこのレストランがどういうレストランか知っていた。彼が同伴者を変えた理由。ただ死ぬ為の同伴者。タイラーにとってマーゴはそんな存在でしかなかった。
金持ちやセレブの中で、マーゴは完全なる場違い。
スローヴィクはそんな彼女を見抜いていた。
かと言って、邪険に見下しはしない。
マーゴに問う。君はあっち側か、我々側か。
このレストランの中では独裁者のようなスローヴィク。
圧され、追い詰められる中、ある反撃に転じるマーゴ。どうしようもない愚かな連中で唯一、見かけによらずタフ。
ここ、結構痛快だった。狂人であってもスローヴィクは超一流シェフ。客のオーダーには応えなければならない。
一応グルメ映画でありながら、振る舞われる料理の数々に一切食指動かず。が、マーゴがオーダーしたアレはマジ美味しそうだった。
何を食べたいか、何が口に合うかは、人それぞれ。
マーゴにとっては(おそらく見る我々にとっても)B級グルメであっても最高の美味なのだ。
途中までは一応グルメ映画。
途中、男たち標的のデス・ゲーム。“料理の○人”から“逃○中”に…?
クライマックスは何と表していいか分からない味。
マーゴは脱出に成功。
自身も傲慢だった事に気付いたスローヴィクは、傲慢なゲストたちと共に、最後のデザート。
我らの愚罪を赦したまえ…。
グルメ映画としてもサスペンス映画としてもかなりの珍味。食事に好み分かれるように、本作も好き嫌い分かれるだろう。
先の読めない展開、スリルとブラックユーモア、オリジナリティー、レイフ・ファインズの怪演、アニヤ・テイラー=ジョイの魅力と美肌…嗜んだのは嗜んだ。
でも、メチャクチャ美味しかった。口に合ったとまではいかず。私もB級グルメ好きなのかな…?
よって、星3つ半!
近大さん、フォローありがとうございます。ログアウトしてログインしたら色々なものが消えてしまって再度フォローさせていただきました。プロフィールの写真を変えたものが新・talismanですが過去のtalismanと同一人物です。すみません