「目に映らないこの世界の空気感を表現してみせる。」窓辺にて 和田隆さんの映画レビュー(感想・評価)
目に映らないこの世界の空気感を表現してみせる。
やはり今泉力哉監督作品は、オリジナル脚本でこそより深く味わうことができることを改めて感じた。独特な会話劇、他者との間、物語世界を照らす陽光や抑制された生活音、そしてなんとも繊細な主人公の苦悩と恋人たちの心の揺らぎなどが、今泉的“リアルな恋愛観”で巧みに描かれる。
まるで異世界からやってきたかのようにも見える、渦巻く複雑な心を持った主人公の市川に、稲垣吾郎がその佇まいと眼差し、台詞の繊細な言いまわしによって説得力を与えている。そして今泉監督が紡ぎだす言葉や、カフェの窓辺や公園などで登場人物たちの顔や手を照らす陽光が、目に映らないものや、市川が見ているこの世界の空気感を表現してみせる。
人にはどこか欠落している部分があるもので、それで悩み苦しむこともあるが、それでもいいじゃないかと、静かに見る人の心を包み込んでくれるような作品だ。
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