「またまた彼らが魅了してくれる極上のお・も・て・な・し」ダウントン・アビー 新たなる時代へ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
またまた彼らが魅了してくれる極上のお・も・て・な・し
イギリス北東部ののどかなダウントン村。そこにある大邸宅で暮らす当主貴族と仕える使用人たち。
世界中で大人気の英国TVドラマシリーズの劇場版第2弾。
TVシリーズは未見、劇場版を見ただけ。一応今回も見とくか程度の感じで見たのだけれど…、
前作を見てからちと間が空いたので、さすがに始めは誰だっけ? どういう関係図だったっけ?…ばかりだったが、見ていく内に解消。思い出したと言うより、まあ全把握ではないが、登場人物や相関図はそうややこしいもんじゃない。
話もTVシリーズや前作の直接的な続きではなく、本作は本作で一本の話なのが有り難かった。
さて、その話。前作のメインイベントは国王陛下夫妻の訪問だったが、今回は二つ。
南仏の別荘の寄贈と、屋敷で映画撮影。
まずは映画撮影から。
この昔の面影を残す屋敷を舞台に、ハリウッドからサイレント映画の撮影をしたいとの申し出が。現当主ロバートは反対するも、所々傷んでいる屋敷の修繕費の為、長女メアリーは父の反対を押し切って許可。
夢の都がこの屋敷にやって来る! 当主たちは眉を潜め、使用人たちは色めき立つ中、スタッフ/キャストが到着。監督バーバーは真面目で主演男優デクスターは陽気な性格だが、主演女優ダルグリーシュは無作法不機嫌…。
それでも映画撮影は順調に進められていたが、会社から突然中止の連絡。時代はサイレントからトーキーへ。サイレント映画は当たらない。
悩むバーバーにメアリーが提案。この映画をトーキーにしては…?
その案が受け入れられ、急遽録音技師を呼び寄せ、トーキーとして撮影再開。すでに撮影したフィルムにアテレコをする。
が、ここで問題が…。デクスターはダンディな声でOKだが、ダルグリーシュは地声が訛りが強く…。イメージに合わない。
そこでまさかの、メアリーがダルグリーシュのアテレコを。本人も思わぬ事に最初は断るも、見事な声の演技を披露。
面白くないのはダルグリーシュ。撮影でバーバーといざこざを起こし、遂には撮影をボイコット。
映画はどうなる…?
南仏の別荘の件。
発端は、その別荘の持ち主である亡き侯爵から先代当主夫人ヴァイオレットが受け継ぎ、ヴァイオレットは曾孫に遺贈するとの事から。
疑問を感じたロバートは屋敷での映画撮影の反対もあって、妻やその他の面々、同じく映画撮影に反対の前執事カーソンを伴って、南仏へ。
別荘の現当主男爵は迎え入れてくれるも、先代当主侯爵夫人は不愉快な表情。
が、寄贈はもう決まった事。悪くない別荘だし、曾孫の家族は喜ぶが、驚きの事が…。
ヴァイオレットと先代当主侯爵はかつて恋仲。さらに、ロバートは二人の子供である可能性が…。
こんな素敵な別荘が何の訳もなく手に入る筈がない。そんな理由があったのか…。
でもそれ以上に、自身の出生に動揺を隠せないロバート…。
この別荘の件は元より、映画撮影の設定に助けられ、お陰で興味深く飽きずに見れた。
当時の映画界の“大事件”。サイレントからトーキーへは大変革。日本では活弁士が仕事にあぶれ、ハリウッドでも人気が下落したスターも。
ダルグリーシュの終始不機嫌は、これ。サイレントではその美貌で人気を博したものの、トーキーではこの声のせいで…。前主演作も不入りで、女優活動崖っぷち。…いや、もう私の時代は終わった。
そんな彼女を勇気付けたのは、人気女優に会えると色めき立ったものの無作法に扱われた女中たちであった…。
アンサンブルだが、特に印象的な活躍見せたのはメアリー。映画撮影を所々でフォロー。意外な才能も…!?
バーバーとは親交深め、想いを抱かれる。が、メアリーは…。
メアリーだけじゃない。台詞や物語の書き足しや変更を、映画好きの元下僕が担当。さらには、使用人たちもエキストラで出演。
ダルグリーシュは性格が丸くなり、一時はどうなるかと思った撮影も無事終了。
そして、現執事バローにデクスターからある誘いが…。
別荘の件だって悪くはなかった。
まさかまさかの母のかつての恋。自分は父と母の実子ではないのか…?
映画第2弾で驚きの事実、ずっとTVシリーズを見てきたファンには衝撃の展開…には幾ら何でもならず。もしそうなったら、TVシリーズからの設定が覆されるだろう。
ロバートは紛れもなく父と母の実子。
母ヴァイオレットにとってはかつての想いと思い出が蘇った。間もなく終わろうとしている人生で…。
両家にとっても先代たちの思い、受け継がれ今いる自分たちを見つめ直す事が出来た、文字通りの贈り物。
迎えた大団円。
あちこちでロマンスが芽生え、各々の問題も解決。
ダウントンとクローリー家はこれからも!
その矢先、悲しい別れが…。ファンにとっては劇中の皆と等しく悲痛だろう。
一つの人生、時代が終わった。
いつまでも悲しんでいてはいけない。
思いを受け継ぎ、新たな時代へ。
昨年イギリスでは、エリザベス女王が崩御。何だか妙にそれとリンクし、感慨深いものがあった。
見る前は、TVシリーズは未見だし、劇場版前作は見たから一応見ておくか程度ではっきり言ってあまり期待していなかったのだが、思いの外良かった。
と言うか、前作より良かったかも。スルーしないで見といて良かった。
一見さんや馴染み無い人でも受け入れ、魅了する。
それが彼らの変わらぬ、お・も・て・な・し。