劇場公開日 2022年8月5日

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「彼らをカメラの前に立たせたことだけでも有意義」ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言 バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5彼らをカメラの前に立たせたことだけでも有意義

2022年9月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ナチスドイツ時代のユダヤ人虐殺の当事者またはニアリー当事者たちの生の声、生の思想が聴ける快作です。

そう、歴史上悪名高いユダヤ人の大虐殺の舞台に立っていた、舞台を見ていた方々、、それも加害側の貴重な声。それだけですごく価値あるって思います。

映画として放映されるという前提でインタビューを受けている彼らのうち、どのくらい本音を言っているのかなぁ?って思いますが、少なくとも後悔の念がある方と、なんら後ろめたいことを感じていない人の雰囲気は区別できるかなぁって思いました。もちろん、全員本音の50%も語っていないのでしょうが(あくまで個人的な感想ですが)。

それを踏まえて、このさまざまな生き証人たちの声を聞いていると、「悲しい歴史」は人々の記憶から「忘れられる」から繰り返されるんじゃないと痛感しました。もちろん、忘れることはあってはならないと思いますが、それが主要因ではないのだと。

自らを正しく振り返られない。認めない。思想が変わらない。または、悪行を認めてしまってる人がいる限り繰り返されるのだと思います。何%かいるであろう同じ考え方、価値観の人がいるのである。その彼らが色々と教えたであろう子孫がたくさんいるのである。

「殺すのは良くなかった、他の土地へ追い出せばよかった」

この言葉を聞いた時、「あぁ、人間は変わらないんだ、粗相は残るんだ」と映画館の椅子に座りながら膝の力が抜けました、恐ろしいほどの無力感に襲われました。

そう悲しい歴史は「忘れられるから」じゃなくて、「人間がいる限り」繰り返されるんだと思ってしまったのです。そして、今2022年。今作られている悲しい歴史が世界を駆け巡ってます。なんともやるせなくなります。

人間って馬鹿ですよね。

バリカタ