「子供のいたずらから広がっていく人間関係の軋轢を、静かな語り口で描いた一作」落とし穴 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
子供のいたずらから広がっていく人間関係の軋轢を、静かな語り口で描いた一作
シネコンなどではなかなか観る機会の少ない、ラトビアの映画を鑑賞する機会に恵まれました。
ダッツェ・ブーツェ監督の語り口はいくつかの起伏を除いて抑制的かつ巧みで、結末まで目の離せない作品でした。表題の「落とし穴」は、主人公の少年が見つけた(掘った?)穴で、これをあるいたずらに使ったことから、思わぬ騒動に発展します。そして少年に対して距離を置いたり、非難したり、あるいはかばうなど、周囲の人々が様々な反応を示す過程で、それまで微妙なバランスで均衡を保っていた人間関係が、徐々に変化していきます。
少年が虫の死骸を集めたり、罠にかかったネズミが一瞬映し出されたりと、少しぎょっとする箇所も、あるにはあります。しかしそれらはほんの一瞬垣間見えるだけで、基本的には物語が進むにつれて徐々に明らかになる「謎」というか、これまで結びついてこなかったであろう事実同士が結びつくことで生じる摩擦や変化の帰結を追うことに身を委ねることになります。じゃあ謎解きで終わるのかというと、結末は意外にさわやか、かつスリリングで、この点でも観客の想定する予定調和を超えてきます。
ブーツェ監督についての情報は残念ながらほとんど入手できなかったのですが、かなりの経験と手腕を持った作家ではないかと感じました。もし別の作品を観る機会があれば、是非逃さないようにしたい監督です。それにしても、ステンドグラス作りの工程は見ているだけでも楽しい!
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