帰れない山のレビュー・感想・評価
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ただ山で慎ましく生きることすら許されない人間社会のもどかしさ
160分という長編ながらも、その長さを全く感じず。
ただ自然の中で牛を飼いチーズを作り慎ましく生きる…ただそれだけのことが何故実現できない社会なのだろう。
人間の作った社会は、いやがおうにも金に振り回され、土地から、場所から、人から人を引き離してしまう。本編のメッセージとは角度が違いますが、そんなやるせなさが頭の中をグルグルと回っていました。
分かちがたい時間を共有した二人の男性の物語。山での場面ではBGMをほぼ廃し、自然の音だけが流れていき、静寂のなか自問自答する彼らに自分を重ね、まるで人生を一緒に旅するような気持ちになりました。
私も登山をします。この映画のように、歩きながらふとした瞬間に、人生について答えのない問いを考えることもあります。そしていつしか考えることに飽くと、無の境地になります。何も考えない瞬間というのは本当にすばらしく、解放感とその場に溶け込んでいく浮遊感に包まれます。
そんな描写が、生活をする場としての山として丹念に織り込まれ、押しつけがましくなく感じられてよかったです。
山頂のノートに、自分の父親の思いを発見したピエトロ。後悔してもしきれない諦めと、自分の代わりに父に寄り添ったブルーノへの羨望や軽い嫉妬など、山を通じて交差する人生に味わい深さを感じました。
湖の場面、雄大な景色も二回目にくると最初よりも小さく見える経験が私にもあります。
それが、少年時代出逢った頃は何もかも楽しかった二人の関係性が、大人になって距離は再び近くなったものの、色褪せてしまったかのようでした。
ブルーノは本当に山に土として還りたかったのか、それとも…。それは推し量るしかありませんが、ピエトロが帰る理由の無くなってしまった山。いつかは取り残されてしまったブルーノの魂や思い出を甦らせるために、帰ってあげて欲しい…と思いました。
雄大なアルプス山脈
優しい表情を見せる時もあれば
荒々しく厳しい表情を見せる山々に「自然」の
厳しさと豊かさを「都会」に住む者は憧れる。
しかし、そこに住む人にとっては、山も森も川も
当たり前のもので「自然」とは言わない。
ブルーノ(アレッサンドロ・ボルギ)のセリフが
とても印象的でした。
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世界39か国で翻訳され世界的な
ベストセラー小説を映画化とのことですが
もちろん←原作は未読です📖
モンテ・ローザ・・・⛰
イタリア・スイス国境にあるアルプス山脈
2番目に高い山でありスイスの最高峰
美しく荘厳な山々をスクリーンでみれるのは
とてもよかったのですが、物語としては少々
観る者を選ぶ感じがします。
これは、静かな湖畔で行間を楽しみながら
原作を読んだほうが大人の青春を感じ取れそう⛰
自ら選択したのか、選択肢を知らなかったのか
裕福な都会の子と貧乏な田舎の子(無学)の典型のふたり。
あまりにも親密そうなので「怪物」のふたりみたいな関係かと思ってしまった。
親ガチャは絶対的にある、ブルーノーは親のせいで教育の機会すら奪われた。これが彼のその後に人生をほぼ決めていないだろうか。
ブルーノーは自ら進んで山で生きることにこだわったようだが、彼は広い世界を知らないまま成人したのだ。視野が狭いがゆえの選択の幅の狭さだったと言えないか。それに、教育があれば、もう少し上手く経営を考えることができたのではないか、もともと頭の良い子供だったのだ。
31歳まで定職もなく反抗期が継続していたピエトロは、自分の父親とブルーノーが実の親子みたいな親密な関係で、しかも自分はそれを知らなかった、というところで目が覚めたらしい。彼が、長いモラトリアムを経て自分の向いている職業を選ぶだけの選択肢を持っていたのは、彼が親から恵まれた生活環境を与えられていたからだと思う。
ブルーノーは自ら望んだ通り鳥葬にされたようで、わかりやすい描写でした。
人間には「帰れない山」=乗り越えられないこと、もある。
それは人生の真実で、とてもわかり易い。
自然の景観が素晴らしく、ハナシも良くできていると思うのに、流れがゆったりしすぎて何度も知らないうちに眠ってしまいました。いびきをかいていなかったのが幸い。(同行者談)よだれはちょっとすすったようです。
帰れないのは誰で、どの山に帰れないのか。タイトルの意味を考えるだけでも相当考え込んでしまいました。奥の深い哲学的な要素のにじむお話です。
ポスターの絵から何か特別な雰囲気を感じました。
山が舞台の作品は好きな方なので鑑賞することに。
原作が有名な本らしいのですが未読です。
(…というか、存在を全く知りませんでした ・-・)
少年二人が山で出会い、共に生活し、そして別れ。
二人の絆と友情の物語かと思わせる導入部。
※それは的外れでは無かったのですが、
実はもっとずっと内容の濃い話と分かるのは
鑑賞した後のお話でした。うーむ…。
主人公の一人はピエトロ。都会で育った少年。
もう一人の名はプルーノ。羊飼いの少年。
少年期の二人の出会いから青年期へと、
取りまく環境が変化する中でも、二人の関係は続く。
そのように見えていたのだが
ピエトロは自由に他の山や世界を尋ねて歩き
ブルーノは自分の生まれ育った山を離れない。
ブルーノに女性のパートナーができた。
経理や事務を任せ、牛を増やして順調そうだ。
ピエトロはネパールの小学校で子供を教える。
同じ考えの仲間と一緒に働いているようだ。
ある時、イタリアの山戻ったピエトロが
ブルーノを尋ねてこう話す。
” 君は世界の真ん中のとても高い山にいる”
” その高い山の周りには、8つの高い山がある”
” 君は真ん中の山にしか行けないが
僕は周りの山全てに行くことができる”
” 君と僕の、どちらがすごいと思う?”
この辺りから、二人の山に対する哲学的な思考が
滲み出るような展開に変わった気がします。
◇
イタリアの山(モンテローザ)が舞台で始まり
ピエトロはあくまでもその山にこだわり続け
ブルーノはネパールの山に定着します。
この二人の生き方は、似ているようで実は大きく異なる。
年月の経過とともに、その差異が大きくなっていく様と
二人の山に対する考え方の違いの行く末を
最後まで見届ける作品。 そんな感じでした。
作中で出てくる "須弥山"
これは仏教世界の中心に存在する山、という事らしいのですが
山の民 とか
山岳信仰 とか
仏教そのもの とか
もっと色々な概念を理解した上でないと
この作品の本質が見えてこないのかな というのが
鑑賞後の正直な感想です。
観てすぐに内容を理解できる作品では無かったです。
原作を読んでいた方が良いのかも。。
◇あれこれ
モンテ・ローザ (薔薇の山?)
イタリアとスイスの国境の山。 ふむふむ。
アルプス山脈で二番目に高い山(連峰)らしいです。
最も高い地点で4,634mとか。富士山より高い…。
二人が暮らしたところはもっと下だとしても
冬を越すのは簡単では無さそうです。 ぶるぶる。
ヤク
ピエトロが辿り着いたどこかの国(ネパール?)で出てくる
"ヤク" という動物。
ヒマラヤの高山地帯で飼われている動物で、以前観た
「ブータン 山の教室」という作品にも登場していたのを
思い出しました。懐かしい。
※主演のペム・ザムちゃん、元気にしてるのかな。
◇最後に
ブルーノが口にしていた死者の弔い方=「鳥葬」。
ピエトロは「自分なら嫌だ」と言っていました。
厳冬期に行方知れずになったブルーノを探す場面で
数話のカラスが一カ所に群がるシーンがあるのですが
これって、そういう事なのでしょうか。。
そうだとしたら、ブルーノは望んだ通りになったと
そういうことなのでしょうか。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
何カッコ付けている。髭をそれ!
演出家のミスだと思うが、同じ顔なので
どちらがどちらなのか分からない。
もし、意図して髭をそらずに演じさせたとすれば『男の友情』なんだろうね。しかし『狙った意図は、ドえらく外している』としか言いようがない。
『男の友情と登山』なんて、アナクロ過ぎる。散々語られてきた話で、男の友情が美談を産むって事だ。
山の民は孤独を愛して、自然を尊び、都会を嫌う。
ゲッ!そんな仙人みたいな奴はいない。
この話と似たような話が、日本のドラマにあった。『北○国か○』そう、あの黒○五○とそっくり。
ロケ地は3050mとか言っているが森林限界を超えていない。つまり、1800mがイタリアアルプスの森林限界なので、日本で言えば、奥多摩見たいな所。ゆるキャンに毛が生えた程度。
ヒマラヤ!?
さすが、元植民地支配者階級の考える内容だ。彼らから見れば、アジア全域は、野蛮な東の領域。鳥に食わせるなんて、野蛮な文化のあった所。だから、現地妻(?)もインドヨーロッパ系の自分達に似た者。
兎も角、元支配者階層の男性は、こう言ったモラトリアムな親離れしないバカ男の話を、好き好んでよく描く。
孤独を味わいたくば、山なんかに行く必要は無い。都会で引きこもれば孤独なんて、いくらでも満喫出来る。
美しい自然?インドネシアのサンゴ礁の比ではない。僕ならそっちに散骨してもらいたい。
追記
氷河のクラックをなめてはいけない。子供や他人の子供を連れて、気軽に行ける様な所ではない。話をそこに留めておくのかと思った。
鳥葬
夏休みに北イタリアのモンテ・ローザ山麓の村を母親と訪れたピエトロ少年。
おじさんに引き取られ、牛の放牧を手伝うブルーノ少年と出会う。普段は都会のトリノで暮らすピエトロと学校に通っていないブルーノ。山麓の村とトリノでは言葉の違いもあるようです。
有名なイタリアの小説が原作。
山での暮らしに憧れていたピエトロの父親が仕事を終えてトリノから合流すると、二人を連れて山登りに向かったが、ピエトロは高山病にかかり、氷河のクレバスを飛び越えることができない。体力に勝るブルーノに引け目に感じてしまうピエトロ。父親もブルーノを誉め讃えるので、ほんとの息子は立つ瀬がない。思春期になり父親に反発するピエトロ。とくに目標のないままピエトロは大学に進学。一方、ブルーノは村を離れ、石工職人の道へ。ピエトロが大学生になったころ偶然ある店でブルーノをみかける。互いにすぐに認識できたが、一言も言葉をかわすことなく、その場は別れる。ピエトロの父親の死を契機に村で再会した二人。ピエトロの父親はブルーノにひとつの夢を託していた。
自分の代わりに父親と交流していたかつての親友と父親の願いをかなえる作業はピエトロにとって、父親の弔いと関係修復の意味があったと思われました。
その後、ピエトロは二人の秘密基地を離れ、ヒマラヤへの旅に出る。
どっしりと大地に根を張ったブルーノの生き方に意地を張って、自分のアイデンティティーを探していたように思えました。
そして、ブルーノのとった選択。
取り返せない時間と大切だけれども、帰れない場所はピエトロを永遠に苦しめたでしょう。
ブルーグラスバンドの夫婦の悲運をテーマにしたオリジナル脚本のオーバー・ザ・ブルースカイ(2013年)を撮ったベルギー人夫妻の映画でした。だいぶ前にDVD購入して観ていましたが、すっかり忘れていました。残酷な運命とシンボライズされた鳥が出てきた映画だったと思います。このご夫婦はたぶんネイティブアメリカンへの憧れを持っていらっしゃるようです。
残酷な運命と印象に残る大自然の映像はかなりニガい余韻にしばらく浸らせてくれました。結構堪えます。
【”山の民として生きる。”雄大なヨーロッパアルプスの山脈を背景に、都会育ちの少年と牛飼いの少年の交流を描いた作品。父との齟齬、酪農家の経済的苦境を絡め、生と死を様々な角度で描いた作品でもある。】
■北イタリアのトリノに住むピエトロはある夏休みに、山を愛する父と母と共に山麓の村で過ごす。村は道路開通により寂れてはいたが、同じ年の野性味あふれるブルーノと出会い、仲良くなる。
その後、二人は都会と山裾の村に住む二人は疎遠になるが、ピエトロの父の死をきっかけに30歳を過ぎて再会し、父の望みであった”山の家”を共に建てる事になる。
◆感想
・序盤の、ピエトロとブルーノがピエトロの父に連れられてアルプスに登るシーンから、カメラが捉える山脈の美しさに圧倒される。
更に、危険な雪渓のクレヴァスを乗り越えるシーンもハラハラしながら鑑賞。
ー 明らかに高山病に罹っているピエトロのフラフラと歩く姿。お父さん!山のリーダーはメンバーの体調に留意しないといけないよ!
そして、それが切っ掛けで、ピエトロは青年になっても、父からの誘いを拒否し、山には登らなくなってしまうのである。-
・ピエトロと父の確執。ブルーノと父の劇中では描かれない確執。そして、ピエトロの父は突然亡くなる。
ー それまで、定職にも付かず生きて来たピエトロは、久しぶりにブルーノと会い、自らの父がブルーノに託していた”山の家”を共に建てる事になる。
更に、ブルーノが屡々、父に色々と相談していた事も知るのである。
そして、ブルーノは職人として生き方を決めている事も知るのである。-
■二人が、夏場に眺めの良い斜面に石造りの”山の家”を作るシーンは楽しい。そして、且つて二人が遊んだ山中の湖を”こんなに小さかったか?”と言いながら泳ぐシーンも素敵である。
そして、ピエトロの友人達が”山の家”に来た時に話題となる”鳥葬”の件。
・ピエトロが自分の生き方を模索するために、頻繁にヒマラヤ山脈の麓の村を訪れるシーンも個人的に楽しい。お金の無い中、ヒマラヤ山脈には時折出かけていたからである。貧しくとも表情豊かなネパールの民。
・そして、ピエトロはブルーノに促され、独りアルプスの山々を歩く。そして頂にある金属箱のメモ帳の中に記された父の言葉を読み取るのである。
ー 少し、沁みる。普段は厳しい都会での仕事をこなしながら父の唯一の愉しみは登山だったのである。-
・一方、ブルーノも拘りチーズ製造を始め、順調に生活が進んでいると思ったが・・。妻になったラーラとの資金繰りについて口論するシーン。
ー 日本でもそうだが、山の暮らしは経済的には厳しいらしい。一時期、田舎移住が流行った事があるが、殆どの人が挫折した、と南アルプスの小屋番の方から聞いたことが有る。自然の厳しさもその一つであろう。-
・ラーラと娘を麓のピエトロの母に預け、独りで山中で生活するブルーノ。だが、大雪が降った際に駆け付けたレスキュー隊が小屋に入るも彼の姿はない。
ー ブルーノは独りで、山に抱かれたのであろう。そして雪が解けた時には、望んだ”鳥葬”されるのであろう。ー
<今作は、対照的な少年二人の友情と成長を基に、父との齟齬、自然と酪農家の生活、生と死をテーマを様々な角度から描いた作品なのである。>
山は裏切らない
「俺は山に裏切られたことはない」
言葉にすると意味不明な言葉だが、最後にその意味ははっきりする
鳥葬を選び最後まで山の男として生きたブルーノ
父の意思、友人の意志を残された者の中心に据えた生き方は、永久にその回りを浮遊していくしかないのか?
悲しいがそのことが、人生の理である以上仕方がないのだ。久しぶりにストーリーに引き込まれる映画でした。
(オンライン試写会はネタバレがなくてもネタバレ扱い)ぜひ試写会ではなく実際の映画館でみたほうが良いかな
今年124本目(合計775本目/今月(2023年4月度)19本目)。
オンライン試写会で見ることができました。 fanvoice 様には感謝を。
そしてこの映画はその成り立ち上、イタリア文学という知識が求められるところ、そこの部分の補足説明が映画終了後のトークショーでちらっとあったのも良かったです。
この映画はタイトル通り山を描くタイトルですが、日本で山といえば、せいぜい富士山に行くだのといったような話しか出てこないのですが、この映画は舞台がイタリア。イタリアですのでかなりの山もあればいわゆる「山小屋」もあります。この映画はここ(この「ここ」というのは、当然、「山一般」ということ)でお話の大半が進みます。
日本とイタリアは文化がかなり違う部分もありますが、その代表例としては意外なところとして「山」なのかな、と思います。日本にも身近にあるけど、日本で山をテーマにした小説、映画等はあまりみないのに対し、イタリアでは絵本にはじまって幼児向けの本や教科書のレベルでも取り扱われるようです。このため、この映画の原作となる小説も(山文化を体験した当人でないと書けない、という点で)高く評価されたわけです。
もともと映画が原作小説をベースにしていること、また原作小説(アマゾンで買えます)をうんぬん話しはじめるとネタバレになるのでこのあたりできっておきましょう。
ただ、最初に書いた通り、「山のすばらしさ」をテーマとしている以上、試写会ではなく本放送で(また)見てみたいな、と思いました。
なお、若干民法的な解釈が怪しいかなと思える点があるものの(事務管理関係)、そこを突っ込んでも4.5以下にならず、法律的なお話をする趣旨の映画ではないのは明らかなので、そこは全部飛ばしています。
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