「同じ場所に止まるか、動くか。人生の二種択一」帰れない山 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
同じ場所に止まるか、動くか。人生の二種択一
都会育ちの少年、ピエトロが、山を愛する両親と共に過ごした北イタリアのモンテ・ローザ山麓で出会った牛飼いの少年、ブルーノとの交流を振り返る形で物語は進む。2人は同い年で性格もまるで違うが、各々が歩んだ人生には誰もが思い当たる根本的な生き方の違いが反映されていて、思わず胸を突かれる。
ピエトロが山麓を離れてから世界中の山々を制覇し、作家としての地位も固めていくのに対して、ブルーノは故郷の山に止まって貧しいながら牧畜業に専念する決意を固めるのだ。
人生には大まかに言うと2つの選択肢がある。止まるか、動くか、そのどちらかだ。
北イタリアをメインに、大自然の美しさと残酷さ、そして、時の流れに翻弄され、それでも旧友を思いやる男たちの変わらぬ友情を描いた本作は、果たして、自分の人生はどうだったかと言う問いを我々に投げかけてくる。でも、後悔したところで時間は戻らない。鑑賞後に残る複雑な余韻は格別なものだ。
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