「スタンダードサイズ」帰れない山 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
スタンダードサイズ
ゴールデン・ウィーク中日(なかび)の新宿ピカデリー午前中回、少し遅れで開場時間の5分過ぎに着いた時のロビーはそれほど混んでいなかったものの、それは単純に番組のタイミングだったのかもしれません。基本、チケットは割と早めにオンラインで買う私ですが、本作、公開館数が少ないとはいえ意外な客入りに若干驚きました。由来の通りの「黄金週間」、いよいよ映画館にも本格的にお客さんが戻ってきたのかもしれません。
さて本作ですが、イタリアの作家パオロ・コニェッティの自伝的小説の映画化であり、脚本もいい意味で小説っぽさを残しています。語られていることは「人生」であって、言ってみれば日常(生活)の連続で特別なわけではありません。しかしながら雄大な山々を相手に躍動的に遊ぶピエトロ(ペリオ)とブルーノの少年時代。(ピエトロの)父の死を機に再会し、二人で建てる石壁の家。そして、それぞれの道へ進みつつも二人にとって重要な場所である山。更には山を通して亡き父を想うピエトロなど、その美しい風景を大きなスクリーンで観る意味は大きいです。ただ、映画が始まってすぐに気づいてやや意外に思えたのは、アスペクト比がスタンダードサイズと言われる横縦比1.33:1(4:3)を採用している部分でした。でも観始めると、焦点であるべきはやはり人であって、その背景に気を取られ過ぎずにしっかりと物語が入ってきます。そしてそのせいか、久しぶりに(まだ未読である)原作を読んでみたいと思える映画でした。そういった意味でも、家庭用のテレビではより小さめなサイズになってしまうことを考えると、劇場で観なければ作品の良さが伝わり切れない気がします。
お国柄関係なく、男性の方がどうも夢見がちなのかもしれませんが、そこに「山」なんてロマンティック要素たっぷりな背景が絡んでくると、ついつい拗らせたり惑ったり。自分は山なんて殆ど縁遠いにも関わらず「何か解るよ」と思ったり、或いは思いたかったり?
異国の風景を通して、いつしか自分を省みながら郷愁を覚える、そんな作品です。良作。