「ハイコンセプトの低予算ムービー 期待の分だけガッカリが大きい」タイムボム 爆弾解除、ミスしたら即死。 うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
ハイコンセプトの低予算ムービー 期待の分だけガッカリが大きい
おそらく低予算の限りを尽くして、制作されたであろうサスペンス映画。
冒頭に、パリ市街らしき空撮が数分間映され、タイトルバックに移行するが、このシーンは全く必要のないショットだ。全カットでも、内容に何の支障もない。しいて言えば、これで重厚感が生まれ、少々スケールのデカいテロ行為が起きても、説得力のある映像を想像させられる。
映画を見る以上、そのくらいの爆破シーンを期待するのは当たり前だろう。
結論から言うと、この映画にそんな派手なシーンは一つもない。
それなのに、冒頭の空撮が、嫌でもその期待をあおる。イマドキ、この程度の空撮なら、もしかしたらドローンを使えば低予算で撮影可能なのかもしれない。それにしても、この始まりがなければ、もっと他に使える予算があったとも思うのだが。例えば、爆発物処理班が出動して、避難する近隣の住民の画とか、マスコミやネットニュースでひと騒動起きている様子をインサートするとか。
出演する俳優の数も10人に満たない。低予算ならではの華のない俳優ばかりというわけでは無く、いちおう整っている。子役の演技もそつがない。
なによりストーリーがいいだけに、残念でならない出来栄えだ。迫力が圧倒的に足りてない。重厚な人間ドラマを丁寧に描き込んである。
最後に、ウクライナで起きていることを、フランスで知らしめる目的もあって、作られたようだ。
と言っても直近ではなく、3・4年前の価値観のようで、汚職にまみれたウクライナ政府と、それを支援する西側諸国のせいで、罪のない地元住民たちが犠牲になっているという訴えかけだ。それが理由でわが子を失った母親が、社会に訴えかけるために起こした犯罪のようだ。
それにしては、犯行声明もないし、何の要求もない。どうしてこの親子が狙われたのかさえ、定かでない。地雷の撤去を専門に、崇高な人助けを遂行するNPOのようなスペシャリストだけに、爆発物の仕掛けられた自動車にすぐ気づき、爆発する前に適切な行動をとれた。そのことがきっかけで、ややこしい関係性が紐解かれていく。そのスペシャリストのウクライナでの行動が、ひとりの母親を深く傷つけたのだ。
だったら、もっと強いメッセージを犯行声明に込めて、SNSに発信するくらいのことはするだろう。
映画の最後にインサートされるテロップ。
4人に1人が争いで命を落としている。その4分の1は子供だ。
というメッセージも、取ってつけたような感じがする。非常に残念だ。もっとよく出来ただろうに。
2022.7.26