「ユニークな語り口と発想力の虜になる!」なまず 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
ユニークな語り口と発想力の虜になる!
冒頭のレントゲン室で始まる不可思議な描写から鮮烈だ。ナレーションが繰り出す柔らかな口調とその背後で展開する突飛な映像の対比が面白くて、ものの数分でこの映画の地上数センチ浮かび上がったかのような浮遊感の虜になる。人のいなくなった病院内でヒロインを当てどなくさまよわせ、かと思えば、なまずの跳躍を機に街には人知を超えた穴(シンクホール)が空き始めるなど、本当にこの映画は何がどう転んでいくのかわからない。視点や意識もあちこちへ移り変わってストーリーは線形には進まないが、通底する主題はやはりあの言葉、「穴に落ちた時は掘り進めるのではなく、そこから抜け出すべし」。一つのことを気にしだすと、その不安や悩みが底無し沼のように深まってどうしようもなくなっていく。そんな誰の身にもひとつや二つ覚えのある心象模様を、時として観客をポカンと置き去りにしながらも、ユニークに織りなしたイ・オクソプ監督の今後が楽しみだ。
コメントする