「中国3DCGアニメの技術力とストーリーテリングの見事さを強く実感できる一作」雄獅少年 ライオン少年 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
中国3DCGアニメの技術力とストーリーテリングの見事さを強く実感できる一作
中国の地方都市に住むチュンが、憧れの獅子舞の舞い手になるために仲間とともに努力するお話、という雑な要約でもあながち外れていないほどに、本作は少年の成長譚としては典型的かつ簡潔です。
中国の留守児童問題と絡めた中盤以降の展開では、彼の行く末に心が痛むものの、基本的に観客は、チュンが獅子舞の踊り手としてどのように成長するのかを見守り、楽しむことに集中できます。
本作のもう一つの主人公である獅子舞は、その面を覆う毛の描写がとても繊細かつ美しく、まるで一本一本書き込んでいったかのようです。この獅子の面を見るだけでも、劇場で鑑賞する意義は十分すぎるほどにあると思います。
日本では近年、『白蛇:縁起』(2019)が公開されたように、中国発の3DCGアニメーションを鑑賞する機会が増えていますが、それら数本を鑑賞するだけでも、中国のアーティストの技術が極めて高いレベルに達している事が実感できます(『白蛇』は本作と比べるとちょっと大人向きの内容だったけど)。また内容的には典型的な少年成長譚なのに、退屈を感じる暇を与えないシナリオの巧みさからして、物語の構築に当たって古今東西の作品を深く研究している事は明らかです。
また驚くべきは、制作にあたって当局の検閲を受けているはずなのですが、それでも中盤の展開の重要な要素として、留守児童という現代中国の抱える問題を作品に入れ込む事ができたという事です。
日本とはおよそ異なった中国の獅子舞ですが、演武とも格闘技ともつかないような動き、アスレチックのような試合会場の造作は、さすがに映像的な誇張が含まれていると思っていたのですが、現実の獅子舞も結構本作のようにアクロバティックであることを知って、それも驚きました!