劇場公開日 2024年1月19日

「漫画の実写化として最高峰」ゴールデンカムイ サブレさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0漫画の実写化として最高峰

2024年1月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

興奮

まず、寒そうだった。冬の北海道で川に入ったり、手袋もしなかったり、裸で拘束されたり、雪道を引きずられたり…。指がもげるほどの凍傷になりかねない、危険な撮影だったのでは…?といぎいぎしながら観ていた。しかしこういったリアリティの追加が実写化の良いところのひとつなのかもしれない。

そして、大傑作だと思った。まず迫力あるアクションが素晴らしかった。冒頭の戦場で主人公が鬼神のごとき振る舞いを見せ、それ以降の戦闘パートも文句の付け所がない。戦闘以外でも、牛山の怪力シーンや白石の妖怪的なアクションが大変良かった。
これまで様々な漫画が実写化されてきたが、アクションに特化した作品で悪いものはなかった。そして今後もそうだろう。本作はその確信を強めた。
また、戦闘パートと対照して平穏パートと言えばよいのか、狩猟・食事やアイヌ文化紹介パートも中々よかった。さすがにリスを解体するところは映らなかったが…それでもリスをチタタプにして、味噌を入れるシーンなどは最高だった。食事シーンを映画の大オチに持ってきたのも大変グッド。緊迫した戦闘とドラマパートの後に、ふっと気が緩むシーンで締めたことで、鑑賞後の気分も爽快で、ものすごくいい気持ちで劇場を去ることができた。

ほかにも褒めたい点はたくさんある。漫画では名前もある重要なキャラクターでも、いざ実写映画となるとモブ同然になることがよくある(キングダムの騰とか…)。そんなもったいないことはできないとばかりに、重要キャラが出てきたらでかでかと紹介文が入る。あれはよかった。おかげで月島軍曹をきちんと認識できた。
あとは、2時間の納め方にも言及したい。実写化の難点として「2時間に収まるように切り貼りしたら面白くなくなる」点がよく挙げられるが、今回は比較的小さなドラマを超重大ドラマに仕立て上げてラストに持ってくることで、多少の切り取りはあるもののほぼ原作通りに通すという偉業をやってのけた。しかも重大ドラマに感じられるように丁寧な作劇をしたばかりか、その作劇は原作を読み返したときに「言われてみれば確かにここ重大だな…」と思わせるほどに見事であった。追加要素もあり、おかげで月島軍曹のキャラも立っていたし、良い。
2時間という時間制限をむしろプラス方向に活かした漫画の実写化作品がこれまであっただろうか!?

北海道の自然の脅威、アクションに飯、そして杉本とアシリパのドラマ、どれをとっても文句のない秀逸な作品であった。ぜひ観ていただきたい。

サブレ