「【女性に興味が無かったチャイコフスキーに恋い焦がれ、漸く結婚したアントニーナの視点で描く物凄い憎悪、嫉妬、執念渦巻く破綻した結婚生活を描いた作品。妻有る者には、色々な意味で怖いです・・。】」チャイコフスキーの妻 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【女性に興味が無かったチャイコフスキーに恋い焦がれ、漸く結婚したアントニーナの視点で描く物凄い憎悪、嫉妬、執念渦巻く破綻した結婚生活を描いた作品。妻有る者には、色々な意味で怖いです・・。】
■アントニーナ(アリョーナ・ミハイロワ)は、チャイコフスキーに恋い焦がれ最初は拒絶されるも、二度目でプロポーズされる。
だが、その後僅か六週間で結婚生活は破綻し別居するが、アントニーナはチャイコフスキーからの離婚請求に、一切応じないのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・ご存じの通り、アントニーナは悪妻で有名であるが、今作はキリル・セレブレンニコフ監督が近年の研究を参考にしながらアントニーナの視点で、チャイコフスキーとの破綻した夫婦関係を描いた作品である。
・冒頭、アントニーナが初めて自室にチャイコフスキーを部屋に招いた時に、蠅がブンブン飛んでいる。そして、最後には、チャイコフスキーの額に止まるのである。ラストのシーンと連動しているし、二人の結婚生活の行く末を暗示しているようである。
・チャイコフスキーから”顔も観たくない。”とまで書かれた手紙を受け取り、更には彼の関係者の男達から執拗に離婚を迫られるも、彼女は頑ななまでに書面にサインをしない。しないったらしないのである。
・男達の執拗さは、アントニーナの住まいに男五人を連れ込み、わざわざ全裸にさせて品定めさせるというトンデモナイ状況まで設定するのである。
だが、アントニーナは一人一人の男の匂いを嗅ぎ、一人の男の一物をギュッと掴んでから席を外すのである。凄いなあ。
・その割に、アントニーナは自身の弁護士と事に及び、2子を設けるも二人とも施設に入れる。この頃からアントニーナは精神の均衡を失っていたのではないかな。
・アントニーナは毎月、チャイコフスキーから金を受け取るも、一括では貰わない。じわじわとチャイコフスキーを心理的に追い詰めつつ、時にはお手製のシャツを金を持参する男を介してプレゼントしたりする。うーむ。怖いなあ。
・そして、アントニーナはチャイコフスキーのコンサートに出かけ、終わった後に赤いドレスを纏って”良かったわ。けれども私と出会った時の曲に比べると、駄目ね。”と宣うのである。チャイコフスキーはその言葉を聞き”蛇のようだ。”と呟くのである。
<別居して数十年が経ち、精神を病んでいると思われるアントニーナは”頭の中で蠅が五月蠅いの。”と呟き乍ら、全裸の男達が激しく踊る中(彼女の妄想であろう。)部屋に佇むのである。
そして、外に出てチャイコフスキーの死を伝える新聞をひったくり、雨の中立ち尽くすのである。
今作は、キリル・セレブレンニコフ監督が、近年の研究を参考にしながら悪妻として有名であるアントニーナの視点で、チャイコフスキーとの破綻した夫婦関係を描いた怖い作品である。>
<2024年10月14日 刈谷日劇にて鑑賞>