「凡庸で甘ったれた子供のささやかな奮起。」アルマゲドン・タイム ある日々の肖像 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
凡庸で甘ったれた子供のささやかな奮起。
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とくに可愛くもないガキが、とにかく甘ったれていてわがままで、それをダリウス・コンジのカメラが対象と正対するような几帳面さで映し出していく。いったい何を見させられているのだろうと考え込んでしまったが、凡庸な子供の限界を、わざわざ凡庸な映像で切り取っているのではないかと思い当たった。そうすると、凡庸な子供を取り巻いているのがさらに凡庸な社会と大人たちであることがわかり、現代に向けた辛辣な社会批評であることもはっきりとしてくる。
主人公はある騒動を起こすのだが、これほど煮えきらない解決を見せる映画もなかなかなく、シビアな現実に心が冷え冷えとしてくる。しかしそこに甘んじることなく、その先まで行きたいと心から思えるのか? ラストシーンの唐突なメッセージについて考えるエンドクレジットの時間の豊かさに、ああいい映画を観たんだなと遅まきながら気付かされた。ジェームズ・グレイ監督にしてやられました。
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iwaozさんのコメント
2023年7月8日
凡庸に育ってきた自分には、これぞリアルだと感じました。今になってして思えば、なんであんな事をしたのか、あの時、なんでこう出来なかったのか、後悔ばかりです。で、それは自分の周りの大人たちもそうで、矛盾だらけの発言と行動の日々。自分のその後悔をはらす為に、監督は実体験を100%忠実に再現したのだと感じました。自分にとってはこれこそリアルだと思いました。f^_^;