劇場公開日 2023年5月12日

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「戻りたくない時代」アルマゲドン・タイム ある日々の肖像 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0戻りたくない時代

2023年5月19日
PCから投稿

ユダヤ人差別、黒人差別の醜さが延々と描かれていました。
幼過ぎてどうしていいかわからない主人公の少年に「高潔であれ」「戦え」と教える、ウクライナ出身のユダヤ人のおじいちゃんが素敵でした。
その祖父を、アンソニー・ホプキンスが演じているから、何人を地獄に送ったかわからない迫力があってたまらんかったです。

たぶん"The Clash"の「ARMAGIDEON TIME/ハルマゲドン・タイム」が元ネタかしら、と思ったら、テーマはまさにそれでした(作中にも曲が使われていましたし)。
差別だらけの不公平な世の中への批判、階級闘争を歌った曲だったはず。
さらに、レーガンが福音派キリスト教テレビネットワークで「核戦争のハルマゲドンが近い」と煽りまくっていた時代である、ダブルミーニングでありました。

監督の幼少時の実体験がベースになってるようですが、懐かしさとともにあの時代の酷さも思い出しました。
まだ第二次世界大戦の爪痕が大きく残り、東西冷戦で一触即発、五島勉の『ノストラダムスの大予言』で終末予想が席巻する時代。
親は理不尽で、社会は未成熟で、差別がまん延していた。
「昔はよかった」と美化しがちですが、あまりあの時代には戻りたくないとも思いました。

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コージィ日本犬