「カオスながら着地点はしっかり」エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス ゆめさんの映画レビュー(感想・評価)
カオスながら着地点はしっかり
劇場予告観て以来、劇場で観ようと決めてた作品。
まずイマジネーションめちゃくちゃ良いな!
無秩序で不合理、ナンセンスな夢の中の世界を見ているかのよう。
作中で様々な場面や世界をかなり行き来するので、衣装にメイク、世界観、色々見られるのがとても楽しい。
主人公エヴリンと一緒に混乱しつつずっと脳内がジェットコースター状態だった。様々な世界が重なる演出の仕方も面白い(すさまじい情報量)。
あと特にジョイのメイクや衣装が良かった。なぜゴルフウェア?なぜゴスロリ風ファッション?この訳の分からなさがマルチバース世界の無秩序さを出してて良い。
あと、作品としては変化球なのにストーリーのベースが王道SFなのが良い。
非日常から来た存在に自分の秘めた可能性や能力に気付かされて、どんどんアイテムや技、仲間を取り入れて強くなっていき、かつ意識してなかった大きな世界の法則に気づいていくやつ。
よく小説や映画で観るやつで、こーゆーのシンプルにワクワクする!オタクが好きなやつ!
(本作、オタク向けの波動を感じる)
また大きな物語(セカイの物語)が個人のプライベートな物語(本作で言うなら家族の物語)に帰結する、ってのも王道で良いよね。
そこがぶれなかったのでカオスな作品なのに着地がしっかりして消化不良感がない。
人種、ジェンダー、ルッキズム…。アメリカで意識が高まってるポリティカルコレクトネスの要素は時勢もありやはり意識が向いてしまうのはあった。
でもアジア系の中年女性(しかも娘がいる自営業の経営に悩むごく普通の女性)が主人公なのは、新しい雰囲気を持ち込む要因になってて良かった。
しかも主人公のエヴリンは色んな面で成功しないまま生きてきた(本当はそんなことないんだけど)ので、だからこそマルチバース世界のエヴリンの能力を手に入れることがどの世界線の彼女よりも強くなれる要因になってる、という設定が面白い。
アクションも動きがスピーディーでカッコよかった。
カンフー要素入れてたのが良い(マッチョ小指はちょっと笑った)。
下世話で下品なくだらないシーンも割と有り。
みんな突飛な行動取ろうとすると割と下ネタに走りがちなのに脱力して笑った(棒状のモニュメントをお尻に入れようとする人多すぎ問題。笑)。
難点はちょっと長いことと、登場人物の魅力にかけることかなあ…。テーマや世界観や演出とかは映画作品として本当に良かった!