「多元宇宙全体に広げた風呂敷はタタミ一畳分の広さしかなかった」エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス ストロングマシンさんの映画レビュー(感想・評価)
多元宇宙全体に広げた風呂敷はタタミ一畳分の広さしかなかった
扱ってるテーマに普遍性を感じるので、アカデミー賞ノミネートは分からんではないけど、はっきり言って万人受けしないエッジが効きまくった作品です。
マルチバースという設定に違和感なく着いて来れるか?
割とモロだしの下ネタギャグを受け入れられるか?で評価がハッキリ別れるはず。
私は割と楽しめた方でしたが、正直2時間20分の上映時間は長過ぎて鑑賞後グッタリしてました…
2時間で充分描き切れる内容だと思うので、冗長なパートを削ってよりシャープにすれば星+1になったかな?
■良かったところ
・ふざけたコメディと荒唐無稽なアクションが大半を締める割には、移民・同性愛・熟年離婚・介護・貧困…etc現代社会が抱える問題から逃げずにきちんと解決しようとする姿勢が誠実に感じられた
・ジャッキーチェンの街角カンフーの流れを汲む、ランダムシチュエーションでの戦闘がアイデアいっぱいで楽しい
・中盤以降に現れる「岩しか存在しないユニバース」が破茶滅茶な展開の中での清涼剤のように作用して、動→静→動の振れ幅がとても良かった
・日本のサブカルチャーにもかなり目配せしてくれているのはとても嬉しい⭕️今敏の「千年女優」は言うに及ばず、靴の匂いを嗅がせるシーンはクレヨンしんちゃんの傑作「オトナ帝国」を彷彿とさせるシーンで思わずニヤリ
■イマイチな点
・主人公エヴリンがいるユニバースでの出来事は全て「自宅のランドリー」と「国税庁」の2箇所でしか行われてないので絵面が変わらず、バトルシーンがやや冗長に感じられてしまう
・敵と味方の構図がイマイチ分かりにくいので戦闘シーンでのカタルシスが物足りない。例えば監査官のおばちゃんとのバトル→別のユニバースではおばちゃんと愛しあっているシークエンス→また自分のユニバースでおばちゃんとバトル…と行ったり来たりするので感情の置き所に困ってしまう
・下ネタが露骨過ぎて、メチャメチャ好き嫌いが別れる。私は正直やり過ぎだと思った