「Be Kind, My Friend. リー師父没後50年、カンフー映画頂に達すっ!!」エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
Be Kind, My Friend. リー師父没後50年、カンフー映画頂に達すっ!!
日常に疲れ切った平凡な中年女性エヴリンが、何故か全マルチバースの命運をかけて謎の存在と戦うことになるというSFアクション・コメディ&ヒューマン・ドラマ。
製作は「MCU」シリーズの、映画監督アンソニー・ルッソ。
👑受賞歴👑
第95回 アカデミー賞…作品賞、編集賞、脚本賞、監督賞、主演女優賞(ミシェル・ヨー)、助演男優賞(キー・ホイ・クァン)、助演女優賞(ジェイミー・リー・カーチス)!✨✨✨✨✨✨
第80回 ゴールデングローブ賞…主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)、助演男優賞!✨
第48回 ロサンゼルス映画批評家協会賞…作品賞!
第38回 インディペンデント・スピリット賞…作品賞、脚本賞!✨
第28回 放送映画批評家協会賞…作品賞、オリジナル脚本賞、助演男優賞!✨✨
第18回オースティン映画批評家協会賞…作品賞!
今年2023年は、偉大なる武術家ブルース・リー師父が没してから丁度50年という節目の年であります。
そんなメモリアル・イヤーに日本公開されたこの作品、通称『エブエブ』。
還暦を迎えたカンフー・スター、ミシェル・ヨーが縦横無尽に動き回る奇想天外な一作!
すでにアメリカでは公開済みであり、同国の賞レースを席巻中。今月13日に開催される第95回アカデミー賞も、本作が主要部門を独占するのではないかと目されています。
本作は「マルチバース」という多元宇宙論を軸に物語が展開していきます。
マルチバースと聞くと、やはり思い浮かぶのはアメコミヒーローが大活躍する世界最大級のフランチャイズ、「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」。
MCUもまさに今、「マルチバース編」という新シリーズに突入したところなのです。
面白いのは、本作の製作を務めているのがMCUシリーズを世界的フランチャイズにまで成長させた張本人、アンソニー&ジョー・ルッソ兄弟であるということ。
詳細は不明だが、中心人物であったはずのルッソ兄弟は、現在マーベルとは完全に袂をわかってしまっている。
そんな立場にある彼らが、MCUと全く同じ題材を用いた作品を公開したという事実は非常に興味深い。
だってこんなん、ある意味クーデターみたいなもんでしょ。日本プロレスから独立して新日本プロレスを立ち上げたアントニオ猪木みたいなもんでしょ。
一大組織マーベルに真っ向から喧嘩を売ったルッソ兄弟。彼らの今後には要注目ですね。
さて、各方面から大絶賛の嵐を受けている本作。
まず言わせてもらうと、この作品は例えば『トップガン マーヴェリック』(2022)や『RRR』(2022)といった誰が見ても楽しめる超娯楽作品ではございません!
芸術性の高い作品を発信し続けている映画会社「A24」が配給を行なっていることからも分かる通り、アチョーーッ!的カンフーアクション映画ではなく、むしろ純文学的な香りが色濃い思想性の強い一作となっています。
なので、ミシェル・ヨーが主演だからといって『ポリス・ストーリー3』(1992)みたいな作品を期待していると「?」となってしまうことでしょう。
まぁこれは正直宣伝の仕方が悪い気もする。#エブエブとか言ってるけど、そう言うノリの映画じゃないからねこれ!!
確実に賛否が分かれるであろう本作。
個人的には………大絶賛!!!大号泣だぜメ〜〜ン!😭😭😭
正直、前半のギャグパートは結構滑ってたと思うんですが、終盤の展開には涙が溢れて止まらない…。滂沱の如く泣いちゃいました…💧
特に石になったエブリンが娘を追いかけるシーン。あんなもん泣くに決まってんだろうがっ〜!!
MCUが完全に持て余しているマルチバースという概念。本作はこのマルチバースの扱い方が上手いっ!
別宇宙の自分の能力をインストールして戦うという設定は最高に楽しく、そしてこのマルチバースという設定が、自分の人生も他人の生き方もマルっと受け入れるべしという本作のメッセージを表現する上での必要不可欠な要素となっているところが素晴らしい✨
ルッソ兄弟がマーベルに対して「マルチバースはこうやって扱うんじゃい!!」と突きつけているかのような、見事な作劇だったと思います♪
もう一つ語っておきたいのは、役者陣の素晴らしさ。
御年60歳のミシェル・ヨーによるカンフーアクションの素晴らしさは言うまでもありませんが、何より良かったのは頼りない旦那さんを演じたキー・ホイ・クァンさん!!
『グーニーズ』や『インディ・ジョーンズ』に子役として出演していたらしいのですが、私はこれらの作品を観ていないので彼に思い入れはありません。
それでも、彼の演技力の素晴らしさには目を惹かれずにはいられなかった。
ひ弱な旦那さん、頼りになるエージェント、そしてトニー・レオンのような影のある色男まで、同じ人とは思えないほどに演技の幅が多彩。そしてカンフーアクションもキレッキレ!
何より顔がジャッキー・チェンに似ている!!
もう素晴らしいとしか言いようがない。本作で20数年ぶりにハリウッド作品へカムバックしたらしいのだが、これだけの能力を持った人が表舞台に出てこれなかったというのは、いかにハリウッドにアジア人俳優の居場所がないのかということの表れなように思える。
本作出演によってゴールデングローブ賞を獲得したクァン。このままの勢いでオスカー像もゲットして欲しい。
先にも述べた通り、本作はアクション映画というよりはヒューマン・ドラマ。それにかなり観念的な内容になっているため、観る人を選ぶだろう。
人によっては「ベーグル」の件でついていけなくなってしまうのではないかと思う。
個人的には、本作はかなり村上春樹っぽい作品だなぁ、と思いながら観ていた。村上春樹好きだからこそ、この作品をすんなりと受け入れられたという点もあるように思う。
世界を滅ぼすベーグルというのもいかにも村上春樹的なモチーフだと思ったし、あるユニバースでの行動が他のユニバースに影響を及ぼすというのも「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」(1985)を思い出させる。
もしかしたら本作の監督/脚本家であるダニエルズはハルキストだったりしてね。
難しいようでいながら、最終的には「人に親切になろう」というド直球なメッセージを愚直なまでに観客に届けようとする。このダサさと汗臭さ、そりゃ号泣するだろこんなもん😭
結局これに勝るメッセージなんか、この世の中に何一つとして無いんだから。もうこれだけでこの映画最強っすわ。気が狂いそう〜♪やさしい映画が好きで〜♫
ギャグが滑り気味だったこと、思ったよりもカンフーアクションが少なめだったこと、この2点を除けば完璧な作品だったと思います。
ブルース・リーが切り開いたアジア人のハリウッド進出。彼の死後50年にして、ついにここまでの精神性と娯楽性を併せ持った大傑作が誕生したのだという事実に嬉しみが止まらない!
「Be Kind, My Friend」。この精神でこのバースを生きていこう、そう思える一本でした!✨
オススメ!!!アチョーー🔥
※この作品、旦那…ジャッキー・チェン、娘…オークワフィナというキャスティング案もあったらしい。
この2人が出演しているマルチバースも存在しているということですね。そっちも観てみたい!!
なおさん、コメントありがとうございます♪私のレビューが参考になれば幸いです(^^)
村上春樹は毎年毎年マスコミに騒がれてちょっと可哀想です💦
そりゃノーベル賞はなかなか取れませんって〜…。
いいたい事をほんとにわかりやすくレビューしてくれてます!
いろんな情報も知られてるので、そかそかと思いながら、だってよかったもーんってなりました。村上春樹ですね!確かに!村上春樹は、受賞いつも逃しちゃうけど笑
アカデミーは認めたよ!っていいたいくらい笑
共感ありがとうございました。
とても参考になるレビューですね。
この映画の宣伝は、アカデミー賞ノミネートを冠に掲げすぎたかなぁ。
そういう賞を受けるような、まじめな映画を期待して観に行った人が、なんじゃこりゃ!と怒る、そんな現象が起こってる気がします。
内容はスイスアーミーマンとさして変わらないと、私は思うので、免疫があるかないかも関係してるかも。
宣伝しないまま受賞の方が、好意的な意見が増えていたのでは。
あくまでも個人的な印象ですが。
村上春樹からのアプローチ、斬新で朝から度肝を抜かれました。
他にもなるほど❗️な視点がたくさんあってそうか、そうかと目から鱗でした。
ありがとうございます‼️