「笑いの力を信じている」エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス shironさんの映画レビュー(感想・評価)
笑いの力を信じている
カオスのなかの普遍のロジック
敵を知ることで攻撃(アプローチ)が広がる!
家族と戦う物語は、家族が闘う物語。
みんな見えない敵と闘っている。
前半のスピーディーな展開に振り落とされそうになります。
あれよあれよと言う間に主人公が訳のわからない世界観に巻き込まれていき、観客も頭の中が??でいっぱいになります。
時代の変化はスピーディー。
頭で理解するまで現実は待ってくれません。
思い切って飛び込んでみるしかないので、観客もとにかく一緒にダイブするしかない。笑
カオスを実体験できる、映像の洪水に圧倒されます。
1秒にも満たないカットも妥協なし!
それぞれの世界観設定の細部にまでダニエルズ監督たちのこだわりが行き届いているので、情報量が半端ない。
全てを演じ分ける役者も素晴らしい。
家族の物語は
母と娘の確執の物語であり
親から巣立つ子供の物語であり
夫婦の物語であり、自分の親との物語であり…
そして家族を取り巻く隣人の物語でもある。
盛りだくさんのテーマを描く“群像劇のエッセンス”をギュギュっと並行宇宙に集約。
マルチバース便利!
目の前にやらなくてはいけないことが山積みで、日々の生活だけで手一杯。
家族はちっとも協力的でないばかりか、むしろ自分の足を引っ張ってくる。
疲労とイライラが募り、自分だけ頑張っているのに報われない気持ちに苛まれる。
ワンオペの子育てや介護あるあるだと思いますが、自分の中の目標やゴールに向かうとき、時として家族が障害となったり邪魔者になったりする。
人を動かすのは難しい。
全く同じ状況下でも1人1人見えている世界が違うから。
1人1人が小宇宙なのだから。
でも、自分の見方をちょっと変えるだけで、短所は長所になる。
軋轢や戦いを避けるのは難しい。
相手のことを理解出来ないから、得体の知れない未知の存在に恐怖を感じて排除しようと攻撃する。
でも、理解はできなくても、相手の小宇宙を知ることで的確に攻撃(アプローチ)できる。
そんなクライマックスの戦い方が、とても素敵でした。
そして、この映画で一番嬉しいのは、笑いの力を信じているところ!
バカバカしい笑いや、下品な笑いもひっくるめて、笑いには人を動かすパワーがある。
その実、笑いほどセンシティブなものも無いのですが、使いようによっては
ユーモアが距離を縮め、笑いが争いを止める武器になる。
ダニエルズ監督たちは、これからもこの武器を引っ提げて、闘う映画を撮るのだろう。
>軋轢や戦いを避けるのは難しい。
相手のことを理解出来ないから、得体の知れない未知の存在に恐怖を感じて排除しようと攻撃する。
でも、理解はできなくても、相手の小宇宙を知ることで的確に攻撃(アプローチ)できる。
そんなクライマックスの戦い方が、とても素敵でした。
うなづきまくりです。素晴らしい!