劇場公開日 2022年5月27日

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「ぜひ「ローレル・キャニオン 夢のウェストコースト・ロック」とセットで」エコー・イン・ザ・キャニオン 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ぜひ「ローレル・キャニオン 夢のウェストコースト・ロック」とセットで

2022年5月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

楽しい

萌える

個人的な話から始めて恐縮だが、本作で案内役のジェイコブ・ディランがフロントマンを務めるザ・ウォールフラワーズの野外ライブを、1998年9月サンフランシスコのゴールデンゲートパークで観ていた(対バンはほかにスマッシュマウス、シックスペンス・ノン・ザ・リッチャーなど)。日本のフェスとは趣がかなり違い、だだっ広い芝生ゾーンに観客がそれぞれビールや軽食などを持ち込んで適当に座り、録音や撮影も特に規制されておらず、思い思いに楽しんでいる雰囲気が心地よかったのを覚えている。当時流行っていた「The Difference」を含むアルバム「Bringing Down the Horse」のCDも買ったくらい好きだったのに、その後ほとんど聴かなくなっていたので、本作で思いがけずジェイコブに“再会”したような感慨を覚えた次第。

前置きが長くなったが、本作は、60年代のローレル・キャニオンを中心として誕生したウェストコースト・ロックの名曲を集めたトリビュートアルバムが50周年記念として作られ、それに合わせて製作されたドキュメンタリー映画だ。比重としては、ジェイコブをはじめベック、ノラ・ジョーンズ、フィオナ・アップルら中堅どころのミュージシャンが(大御所たちとのセッションも交えながら)往年の名曲をカヴァーするパフォーマンスがメインになっているので、可能なら5月上旬に封切られた「ローレル・キャニオン 夢のウェストコースト・ロック」(こちらはオリジナルの名曲たちをたっぷり聴かせてくれる)を先に観てから本作に臨むとより楽しめると思う。ブライアン・ウィルソン、エリック・クラプトン、ニール・ヤングらの演奏も聴けて、洋楽好きならかなり楽しめる内容になっている。

そうそう、ザ・バーズのロジャー・マッギンがジェイコブと話しながら何の気なしにジャラーンと鳴らすマーティンのアコースティックギターの乾いた音が抜群に良くてびっくりした。別にそばにマイクを当てたりとかもしていないのに、あの響きは一体何なのだ、とアコギ好きにはたまらない高音質収録でもあることも記しておこう。

高森 郁哉