「新たな怪盗たちにハートを盗まれていきました」バッドガイズ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
新たな怪盗たちにハートを盗まれていきました
ドリームワークスらしい動物を擬人化した単なるファミリー向けアニメーションと思うなかれ。
こりゃ日本のアニメファンにこそウケるのではないか。
だって気分はまさに、アレ!
スリのウルフ、金庫破りのスネーク、ハッカーのタランチュラ、変装のシャーク、怪力のピラニア。
彼らはウルフをリーダーとする、泣く子も黙る怪盗集団“バッドガイズ”。
華麗な盗みのテクとチームプレーで、狙ったお宝は逃さない!
もう完全に『ルパン三世』!
ウルフのキャラ像も。クールでコミカルな二枚目半。イカした台詞。ワルだけどカッコいい。ルパンやん!
仲間はルパン・ファミリーとはちょっと被らないけど(相棒のスネークはお喋りな次元…と思ったけど、次元はもっとダンディだし)、チームワークの良さは引けを取らない。
バッドガイズ逮捕に執念を燃やす女署長は銭形のとっつあんっぽかったけど、とっつあんはもっと名物キャラ。
でもでもでも、彷彿させつつ、アニメーション界に新たな怪盗集団現る!
『ルパン三世』など日本のアニメ/漫画、『オーシャンズ11』(華麗なチームプレーは寧ろ本作のよう)やタランティーノ作品(OPシーンはまるで『パルプ・フィクション』!)などのクライム・ムービーからインスピレーション、リスペクト、オマージュ。
私のハートも始まって早々に盗まれてしまった。
話はただの怪盗集団お宝狙う!だけに留まらず、凝ったストーリーやテーマやメッセージがバランスよく打ち出されていた。
バッドガイズが次狙うは、“黄金のイルカ”。伝説の怪盗“クリムゾン・パウ”も奪えなかった秘宝。
挑発する知事のメスギツネ、ダイアンや署長に目にものを言わせてやる!
いつもながらの用意周到な計画。滞りなく決行。
今回も華麗に成功!
…と思いきや、寸での所で失敗。遂にバッドガイズが逮捕された!
このまま刑務所送り…と引き換えに、ここで提案。
街の名士であるモルモットのマーマレード教授の更正プログラムを受ける。“バッドガイズ”を“グッドガイズ”に。
ダイアンの後押しもあって受ける事になったのだが…
俺たちがまんまと“グッドガイズ”になる訳ねーよ。
協力するフリをしつつ、再び秘宝を狙う。
が、その裏で巨悪の陰謀が動いていた…!
ズバリ、黒幕はマーマレード。
とあるシーンのおばあさんと暗示もおそらく彼だろうと察しが付いた。
街に落ちたハート型の隕石。その研究への功績で募ったチャリティー金と隕石も盗む。
率いるは、隕石のパワーで操る恐るべきモルモット軍団…!
…って、これ最近“ペット・ヒーロー”で見たぞ。可愛いモルモットが実は悪ってのは、最近のハリウッド・アニメの定番なのかしら…??
クールビューティーなダイアン。彼女も何か一癖ある気がした。その意外な正体までは分からなかったが。
キャラの一捻りや陰謀などうっすら予想は付く。しかし先が読めてしまう面白味の無さではなく、いい意味で予想通り展開していく小気味良い面白さ!
ストーリー、演出、テンポ、音楽、キャラ、全てが快調!
吹替で見たが、尾上松也、安田顕、ファーストサマーウイカ、チョコプラ長田、A.B.C-Z河合らも上々。
クールなアクション・シーンは『スパイダーマン:スパイダーバース』風。
計画や作戦は本当に痛快。
ウルフとダイアンも大人な関係。
仲間の絆もしっかりと。
チームに亀裂が。終盤、相棒に愛想を尽かし、あっちに寝返る。
だけど、やはり見捨てられない。仲間、友の絆が再び…。
持つべきものは、仲間や友。それこそが一番の宝。バッドガイズ・フォーエバー!
王道だけど、それがいい。
もう一つ…いや、一番のメッセージ性。
オオカミ、ヘビ、クモ、サメ、ピラニア…イメージ的に怖かったり、嫌われアニマル。
一方のモルモットは弱々しく、可愛らしい。
そのレッテル通りなのか…?
よく言うではないか。綺麗な薔薇には棘がある。可愛い顔したモルモットには要注意!
確かに彼らはワル。そうやって生きてきて、それが誇り。生き甲斐。
でも、盗みはするけど(勿論悪い事だけど)、決して他人を傷付けない。ここら辺も『ルパン三世』っぽい。
根っからの悪人じゃない。バッドでグッドな奴ら。
レッテルやイメージへの偏見や訴えは、『ズートピア』のよう。
『ズートピア』ほど深くはないが、それでもエンタメ性と上々。
ドリームワークス・アニメーションと言えば、『シュレック』『マダガスカル』『カンフー・パンダ』、最近だと『ボス・ベイビー』が人気だろうが、個人的には『ヒックとドラゴン』に次ぐお気に入りになった。
続編…いや、シリーズ化強望!
誰だっていい事をすればハートが心地良くなる。それこそ、尻尾がフリフリしてしまうくらい。
人は変われる。
だけどやっぱり、ワルはやめられねぇ。
このアンバランスな魅力を持った名キャラたちに、古今東西魅了される。
そう、
奴らはとんでもないものを盗んでいきました。我々の心です。