シャーコーン! 呪いのモロコシ鮫のレビュー・感想・評価
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サメ映画はどこにも辿り着けない
この岩の下には絶対気持ち悪い虫がウジャウジャいるんだろうなと思ってひっくり返してみたら案の定その通りだったときの歓喜と後悔が入り混じって対消滅するあの感じ。観終わった後に何一つ残らない不毛さ。意味へと向かって際限なく加速していく現代社会の趨勢に真っ向から対抗するかのような圧倒的無意味。これらを満たすものこそが本当に善きサメ映画だ。歴史に走るな、教訓を与えるな、ひたすら大きな円を描いた果てに振り出しに戻ってこい。
本作に関して言えば、俺の費やしたこの1時間半は明らかに無駄だった、と満面の笑みで断言できる。脚本、撮影、演出、編集、小道具、カット割、すべてがゴミ。風が吹けばこんな映画があったことすら忘れてしまいそうだ。
トウモロコシ畑にサメ!という出オチにしたってパンチが弱すぎるテーマで105分という長丁場を鈍足で進み続ける物語。「ホホジロザメ信仰」の挿話もまるで意味がない。いや意味がないどころか物語の進行速度をさらに低下させている。これら諸々の粗雑さをある種の露悪芸として呈しているのだとしても、芸というほどの洗練さはないし、ガチでやっているのだとすれば単純に完成度が低すぎる。
いや、もうあれこれ裏目読み的に考えるのはよそう。この映画に裏なんかない。隅々までパサパサの不味そうなこの表皮が本作の本尊なのだから。うわつまんね〜、時間無駄にした〜。この二言で全ては事足りる。
俺は俺の人生の中であとどれくらい時間を無駄にできるんだろうか、と考えることがある。そしてその焦燥から意味に固執する。でもそんなんダメじゃないですか、そんなん逃げじゃないですか。俺は無意味に耐えられる。圧倒的な無意味に揉まれながら「つまんね〜」と笑えるだけの余裕がある。たぶん。それを証し立てる具体的実践としての、サメ映画視聴。
ここまでは全部ウソで、ただ一つ本当なのは、この映画が本当につまらないということ。
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