「今だからこそ描ける「貞子」」貞子DX MAGUNETTOさんの映画レビュー(感想・評価)
今だからこそ描ける「貞子」
前提として
・小説「リング」読後
・映画「リング」「貞子」視聴済
・パンフレット読後
形骸化してしまった貞子を新たに描き直した作品。
正直に言ってホラーではないのだが、それが貞子というホラーシンボルへの悲哀や(スタッフ・ファンからの)願望を描いているようにも見える。
本筋はしっかりとミステリー。死を逃れるためにルールを推測していくのは初作から受け継がれていて見応えあり。
ルールの答えは途中で予想がついてしまったが、常にギリギリのところで焦らせるのは良い展開。
使われているキャストなどに笑いを狙っている感が多々あるのはどうなんでしょう。
あと、スカシが多い。"ホラーではない"のは一種のネタバレであるとはいえ、途中でちょっとうざったくなってしまった。逆に王司のウザさが清涼剤として機能してるのはそれはそれで面白いところ。
天然痘ではなくコロナウイルス、ビデオテープのコピーではなくSNSなどで勝手に拡散される映像、超常的ホラーから(メタ的にも)身近な存在としての貞子。
DX(デジタルトランスフォーメーション)であり令和への変換および進化の過程なのかもしれない。
それもそのはず。まず、VHSを知らない世代が生まれているのだ。今までの作品でもそれを踏まえたアップデートのようなもの(スマホから出てきたりとか)はあったが、それを明確に"適応"として描写したのは非常に面白かった。
適応しすぎてもはや「貞子」ではなかったのは残念。
これを踏み台としてJホラーの重鎮として、現代に刺さる恐怖を掴んで戻ってきてくれると嬉しいな。
ラストのシーンはもはや陳腐かもしれないけど予想ができなかったから良い手法。しっかり刺さった。
結論:ホラーじゃないけど貞子が好きになる。あ、でも本家の貞子さんに会いたかった。