劇場公開日 2023年9月29日

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「人たらしなビッチ主人公が掴めなかった不思議な子」まなみ100% たいよーさん。さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人たらしなビッチ主人公が掴めなかった不思議な子

2023年10月3日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

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褒め言葉の意味で、ビッチな人だなと…!川北監督の半生とまなみちゃんとの10年を濃縮還元、喜怒哀楽たっぷりに描く人生賛歌。タラシで個性的な感じと不思議な空気感が堪らない。舞台挨拶の話も交えながら。

なかなか掴めないけど魅力的。「ボク」はそんな性格。女の子へのちょっかいの出し方もどこか子供っぽい。だけど、気にかけてくれることが嬉しく思える。ちょっとモテ男すぎない…?と思えるけど、舞台挨拶で出てきた雰囲気を見ると確かに分かる。大人になれないまま自我を強く持った感じが作品の個性へと変わっている。はみ出し方も際どくてズルい。実際モテるのも分かるなと同性ながらに思う。

そんな彼が掴めなかった彼女が、まなみ。4年前から「あなたをモデルに映画を作ります」と言って観てもらったらしいが、感想は「面白かったよ〜」くらいだったそう。不思議で掴めない、だけど距離が近くて遠い…。「今も好き」と言えるのも羨ましいし、監督の良さでも有るんじゃないかなと。同時に、自身の人生の一部を他人と重ねながら作品として残せることは幸せなことだとも思う。劇中のあるシーン、エンドロールに教わりながら、その生き方を楽しく観ていた。みんな生きているし、生きていたように。

主演は青木柚さん。初っ端かな醜態を晒すような飛んだ役だけど、それも包み込める魅力が確かにあって安心して観ていられる。ヒロインは中村守里さん。歳を重ねていくにも変化を感じられて、すっかり大人っぽさも兼ね備えているのだと感じる。くろけいちゃんを演じる宮﨑優さんや瀬尾先輩を演じる伊藤万理華さんなど豪華なキャストに大満足。邦画好きにはご褒美みたいなキャスティングだ。

痛いほど強烈な自叙伝とも言える今作だが、同時に生きている周りの人たちとの愛が滲み出ていて、どこか心が温かく包まれる。ふと思い出したあの子が今も幸せでありますように。そんなことを祈りながら。

たいよーさん。