配信開始日 2022年6月17日

「惜しい」スパイダーヘッド ゆきまんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0惜しい

2022年6月18日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

いい点
・マイルズテラーうますぎ
死ぬほどうまい。中盤で薬投入されて無表情で感情を表現するシーンがあるが悲しみと苦しみがバンバン伝わる。日本には表情のレパートリーが少ない若手役者が多いが(大体アイドルあがり)無表情でここまで表現できるとは。クリヘム微妙。ラストで笑ったり泣いたり怒ったりを一辺にやる役者冥利に尽きる場面があるが微妙だった。ここは設定もテーマも相まって一番の見せ所だったろうに。パブリックイメージも完全に「バカなムキムキ男」で定着してしまっていて彼の役者人生は前途多難だなぁ。

悪い点
・長い。感情とは何か、自我とは何か。などのテーマに興味がないと相当キツイ
映画「メッセージ」の言語とは?「エクスマキナ」の女性性とは?などの知的好奇心を刺激するテーマに対して興味がないようではこの映画は相当キツイ。感情とは何か、それをコントロールできるとしたらどうなるのか、というテーマで2時間は正直長い。1時間半くらいならよかったと思う。

・サスペンスが盛り上がりきらない
全編通してサスペンスの出来はかなりいい。不快で不穏な熱の上げ方や中盤のショッキングシーンでしっかり引き締める。後半も盛り上がる。しかしラストで一気に雰囲気をがらりと変える。これでうまく機能していない。散々重苦しくひっぱってラストで一気にギアを変える手法が最近やけに流行ってるよなー…と白々しく見ていた。

・テーマのオチが弱い
暴露される大オチは結構よかった。なるほどねーとは思ったが「感情を操れるようになったらどうなるのか」のところに明確に答えが出ていないと思った。そしてこのテーマならもっと感動的なオチが用意できたはず。辛い記憶を忘却したい気持ちと罪の意識と向き合うことの葛藤とかさ。罪は誰が許すのか?とかさ。もっと深く掘り下げられたはず。

総評
惜しい。テーマもサスペンスもよく設定も興味深い。しかしライトな作風に振ったのがうまくいっていない。もっとゴリゴリのサスペンスでもよかった気はする。
感情とは何か?というテーマが気になる人は見てもいいと思う。普段、映画をみるといったらアベンジャーズか日本のアニメ!って人はみなくていいと思う。そういう人たちが求めるものはこの作品にはない。

ゆきまん