「火種(エノーラ)が起こす変革の世界」エノーラ・ホームズの事件簿2 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
火種(エノーラ)が起こす変革の世界
あのシャーロック・ホームズに“妹”がいた…!?
…という設定で人気のYA小説を基にしたNetflixオリジナル映画の続編。
先日続編が配信されたばかりで、2作続けて鑑賞。
前作で“テュークスベリー事件”を見事解決したエノーラは、探偵事務所を開業。
兄シャーロックや多くの名探偵に晴れて仲間入り!
…ところが、
依頼は全くナシ。新米や女の子だからと冷ややかな目。さらには名探偵の兄と比べられ、兄の方に依頼したかったとまで言われる始末…。
利発的で自立精神溢れるが、世間知らずな面もあり。世の中そう上手くいかない。
開いて早々畳もうとした時、遂に初めての依頼!
一人の少女ベッシーが、行方不明の姉サラを探して欲しい。
“探偵”として初の仕事に張り切り! が…
開幕早々、警察に追われるエノーラ。
単純な人探しじゃなかったの…??
まず、サラの職場であるマッチ工場へ。
経営者ライオンは財務大臣マッキンタイア卿と昵懇で、僅か2年で業績を伸ばした。
その一方、チフスで多くの女性従業員が死に…。
そんな中サラはある書類を盗み、姿を消した。
エノーラは、ライオンとマッキンタイア卿と書類には何か関連があると睨む。
マッキンタイア卿の秘書ミラ・トロイの後を追って、エノーラはサラの夜の職場である劇場へ。
サラの同居人メイと接触。その帰り、何者かに尾けられている気配が…。
兄シャーロックともばったり出くわす。相変わらず高名の兄だが、ある難事件に頭を悩ましていた。
メイのアパートへ。が、殺されていた。
直後に現れたレストレード警部とグレイル警視。
グレイル警視に疑われ、エノーラは逃走。(ここが開幕部分)
シャーロックに匿って貰うも、危険な事に関わるなと苦言を呈される。
それで大人しくするエノーラじゃない。
再会したテュークスベリーとの会話からヒントを得て、舞踏会へ。
ライオンの息子ウィリアムに接触。
が、エノーラは殺人の罪でグレイル警視に逮捕されてしまう。
絞首刑になるも、ある人物の助けで脱出。
数々のヒント、我が身に起こった出来事、ピンチ…。
それらを繋ぎ合わせ、エノーラはいよいよ核心に近付いていく…。
前作はまだ探偵ではなかったが、今回は晴れて“新米”ながら探偵になった事により、前作よりミステリー度はアップ。
前半~中盤に散りばめられた意味ありげな台詞、キャラ、アイテム、描写…。
それらを全て把握して謎解きするのは容易ではないが、後々繋がり謎が紐解かれていく終盤にかけての展開は、YA小説原作の名探偵のオリキャラ妹とは言え、ミステリーの醍醐味充分。
武術に長け、今回も襲い掛かる敵をねじ伏せる。加えて、高所にぶら下がったり、逃げて走って、馬車チェイスに、アクション要素も前作増し。
引き続き快テンポの展開で飽きる事なく、こちらに話し掛けてくるユーモアが楽しい。
再会したテュークスベリーとはより親密になり、仄かなロマンスから恋愛感情へ。美少年美少女のダンスシーンはティーンの憧れ。
着こなす衣装もエレガントで、立派なレディ。
言わずもがな、ミリー・ボビー・ブラウンのさらに増した魅力にKO。
ヘンリー・カヴィル、ルイス・パートリッジ、ヘレナ・ボナム=カーターも続投。
特に、シャーロックの出番も増えた。エノーラはエノーラで自分の事件を追うが、シャーロックも自分の事件を追う。
実は、両者の事件には知らず知らずの内に接点が…。
シャーロックをも悩ます難事件と、背後に存在する黒幕。
アナグラムの中に隠されたその名は…。
察しは付き、ニヤリとさせるネタ。
新キャラでは、デヴィッド・シューリスが憎々しさ満点。
事件の渦中となる若いキャストたちも奮闘。
サラは女性の職場環境改善の為にストライキを起こした実在の人物がモデル。
キュートな女の子探偵が活躍するエンタメながら、女性の独立や尊厳を掲げるテーマ性は前作から一貫。
事件の真相もそこに集約。
工場でのチフスによる女性従業員死亡は嘘。マッチの元となるリンが原因。
ライオンとマッキンタイア卿はそれを隠蔽し、貧困女性の人命より利益を優先。
その証拠(盗んだ書類には犠牲になった女性従業員たちの名が)を握ったサラは、父の不正に気付いたウィリアムと共に公表しようとしていたが…。
悲劇も。
男たちの悪欲。
グレイル警視やマッキンタイア卿が首謀者と思いきや、彼らをも容易く操っていた真の黒幕は、すぐ近くで事の成り行きをゲーム感覚で見張っていた…。
それに立ち向かうエノーラ。
いつも孤軍奮闘だが、今回ばかりは独りでは難敵。強大な陰謀、力が蠢く。
その力には、こちらも力で。
助けを求めるのもまた勇気。力。
兄シャーロック、テュークスベリー。今回のキーキャラ。陰から見守る母…。
エノーラが繋げた、独りじゃない世界。
ラストシーンの女性たちの解放は、まさにその象徴。
火はたった一つの火種から起きる。
世界は、変えられる。
第1作第2作と続けて見て、いやはや楽しい~。面白い~。
第3作も当然期待。是非!
晴れて結ばれたテュークスベリーとの関係や、“名探偵”の第一歩を踏み出したエノーラの魅力や活躍、名推理をもっともっと見たい。
シャーロックを訪ねてきた“相棒”の事も気になるし♪︎
しかしちょっと引っ掛かったのは…
幾ら多様化社会とは言え、“宿敵”や“相棒”の性別や人種が変えられていた事。
これも“変革”のメッセージなのだろうけど、オリジナルへのオマージュ精神も忘れないで欲しい。