「物語性やストーリーテリングをめぐるジョージ・ミラー監督の思い溢れる」アラビアンナイト 三千年の願い 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
物語性やストーリーテリングをめぐるジョージ・ミラー監督の思い溢れる
実に7年ぶりに世に放たれたジョージ・ミラーの新作は、一見すると『マッドマックス』の巻き起こした一大旋風を綺麗さっぱりリセットしたかのような世界観ではあるものの、「物語や願望についての物語」という意味ではミラー監督のフィルモグラフィー全体を包含するテーマ性を持った作品と言えるだろう。映画の大部分を占める魔人ジンの回想はVFX満載で、ダークかつ魅惑的な趣向によって貫かれ、かと思えばミラーらしい肉感あふれるエキセントリックな描写の数々も観る者を最初はギョッとさせ、やがて納得のニヤリに変えていく。なにしろ三千年という途方もない時代の旅路である。せっかくのエルバ&スウィントンという最高峰たちの共演をもっとじっくり見ていたかった気もするが、逆にいうと彼ら二人だからこそ”道先案内人”のような役割を滑らかに全うできたのかも。声のトーンや存在感に重みと説得力があり、心地よく身を委ねることができる一作である。
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