「あなたに伝えたいこと」ホワイトバード はじまりのワンダー humさんの映画レビュー(感想・評価)
あなたに伝えたいこと
人生の過ちを経験し〝ただ普通に生きることにした〟と言う孫に祖母が「あなたのために」と伝え始める過去。
ここから広がる世界は終戦前のフランス郊外。
吸いこむ空気までたちまち変えながら物語は幕をあける。
ちいさな町にも及んでいたユダヤ人への迫害になす術もなくトラックに詰め込まれていく人々。
その傍らで人間が人間を分断するという不条理に抵抗する正義はひとかけらの尊厳も無く生命の重みとともに打ち砕かれた。
銃声が響きわたる山の斜面、雪の純白を散らしてごつごつした黒い樹々の間を転がるように逃げる赤い靴の少女サラ。
突然の絶望の淵に追われた彼女は同級生のジュリアンに助けられなんとか納屋に匿ってもらえたのだ。
あの状況においては奇跡的なラッキーだったには違いないが、罪もなく息を潜める暮らしや家族との離散、度重なる恐怖と不安に晒された少女の気持ちを考えるだけでどうにかなりそうだ。
そんなサラにとって、納屋に差し込む太陽の光の筋は生きる希望を、穴から見える鳥にはひとときの安心や父母と歌った唄にある勇気を、ジュリアンや彼の両親の無償の思いやりは自分の命を守ることにつながったのだろう。
ささやかなたのしみを見出しながら信頼で結ばれた二人はほのかな恋心も育む。
そう導かれたのはサラとジュリアンに共通する他に流されない心の強さと機転、豊かな想像力の結果だったのかも。
絵を描くのが大好きな少女の未来があのラストに繋がりそっと触れた木彫りの小鳥が映った時、静かな感動が満ちた。
同時に、サラが過去に心で受けとったものたちが後の人生を一緒に越えてきたこと、今後もそれらが彼女を見守るように在るのだろうという確信も。
また、祖母サラの話に耳と目と心を傾けて聴くspecial name=もう1人のジュリアンの姿をみてほっとし、真心が伝える言葉とそのぬくもりには計り知れない力があると信じている私の気持ちを温めた。
華やかで美しいあの石の道にも誰かの深い悲しみや喜びの歴史が幾重にも重なっていることに彼は気づき、きっとまた違う未来を一歩ずつ動かしていける。
時空を自由に旅する。
感じたままを浴びながらあらたな発見もする。
「果てしない空想の世界」はやっぱりいい。
またここにも映画の魅力がとくとくと溢れているかのようだった。
修正済み
コメントありがとうございます!
Humさんのレビューは、とても言葉を大切にしながら編んだ、かつ作品に寄り添った美しい感想だと思いました。こちらのはどうも性格の悪さが出ていて、申し訳ないくらいです(笑)。
こんにちは〜。
共感コメントありがとうございます
本当に良い作品でした
最後の演説の小鳥の木彫りをそっと触れた時、色がかなり黒くなっており、長い年月を共に過ごしてきた事がわかります。汚れるほど、身近にずっとそばにあった事が感動です