「ふぃらでるふぃあ防衛隊、ファイヤー! これが本当の”デウス・エクス・マキナ”か…。」シャザム! 神々の怒り たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
ふぃらでるふぃあ防衛隊、ファイヤー! これが本当の”デウス・エクス・マキナ”か…。
スーパーヒーローが一堂に会するアメコミアクション映画「DCEU」の第12作にして、少年から大人の身体に変身してしまうヒーロー”シャザム”の活躍を描いた『シャザム!』シリーズの第2作。
前作の戦いから3年後、アテネの博物館を謎の2人組が襲撃。展示されていた魔術師の杖が奪われてしまう。杖から力を取り戻した2人は、神々の力を奪ったシャザムに復讐するべくフィラデルフィアへと向かう…。
○キャスト
ダイアナ・プリンス/ワンダーウーマン…ガル・ガドット。
Dr.サデウス・シヴァナ…マーク・ストロング。
ギリシア神アトラスの娘の1人、ヘスペラを演じるのは『モンスターズ・ユニバーシティ』や『ワイルド・スピード』シリーズの、レジェンド女優デイム・ヘレン・ミレン,DBE。
シリーズ6作目『アクアマン』(2018)辺りから愉快痛快娯楽大作的な方向に舵を切りはじめたDCEU。その新機軸を決定付けたのは、やはり前作『シャザム!』(2019)という事になるだろう。
子供が大人になるという逆コナン的なトンデモ設定、何故か少年形態より大人形態の方がIQが低くなるというバカバカしさ、サルでもわかる単純なストーリー、最終的には義兄弟全員がヒーロー化するという東映スーパー戦隊っぽさなど、ヒーロー映画は子供のものだ!と高らかに宣言するかの様な突き抜け具合が魅力的な作品であり、個人的には大変気に入っている一本である。
本作も前作同様、ドタバタな楽しさに満ちた大変優秀な娯楽作品である。
ただ、前作と比べると少々慌ただしいというか、なんかごちゃごちゃしている感じがする。大前提として、神様の復讐とか言われてもイマイチピンと来ないんすよね。マーベル映画でもおんなじ事を思ったんだけど、アメコミ世界における神ってどういうポジションなんだろうか?すごいパワーを持った宇宙人的な事なのか?
気になるのは敵対するアトラス三姉妹。彼女たち、本当に3人も必要だった?中立を貫こうとするヘスペラの描かれ方がなんか中途半端でハジけていない。敵なのか味方なのかはっきりしない彼女の存在が、本作をごちゃつかせている様な気がします。別にルーシー・リューとレイチェル・ゼグラーの2人だけでも充分物語は成立したんじゃないかな。
14歳だったビリーも本作では17歳の青年に。いつまでも子供のままではいられないという事実に思い悩みます。
ビリーと里親ローザの親子のドラマも本作の重要な要素の一つ…なんだと思うんだけど、どうもそこが弱いのも気になるところ。というのも、本作でのビリーはほとんど大人状態で登場しており、子供状態の出番は本当に僅か。神々とのバトルアクションを多く展開するためにはそうせざるを得なかったのだろうが、そのせいで少年の成長物語という側面が弱くなってしまっている。
実の両親に捨てられたビリーが新たな家族を得るまでが前作の内容だったのだから、本作では離れていても家族の絆は切れないとか、もう一つ深い段階で「家族」というテーマを描いて欲しかった。
クライマックス、まさかのワンダーウーマン登場!からの神々のパワーでビリー復活!!にはおったまげた。なんじゃこのご都合主義!?
演劇の世界には、大いなる存在がちゃぶ台をひっくり返して物語を強引に終わらせる”デウス・エクス・マキナ”という演出があるというが、本作の終わり方は正にこれ。デウス(神)が全てを丸く収めて終わりやがった。
いや、いいんだけど!荒唐無稽な『シャザム!』シリーズだからこの展開もありだとは思うんだけど!!ワンウー姉さん、それならもうちょい早く来てくれません!?もうフィラデルフィアの街はめちゃくちゃだよ!
そりゃワンダーウーマンが本格的に活躍しちゃったらシャザムの立つ瀬がない訳で、『シャザム!』シリーズとしてそれではマズイというのはわかる。ただ「世界の危機になんでアベンジャーズやジャスティス・リーグは駆けつけてくれないの?」という疑問がいちいち湧いてしまうのは、アメコミユニバース化における大きな問題点の一つですよね。そりゃまあ気にしなきゃいいだけの話なんだけどさ…。
…うーん。なんか文句ばっかりのレビューになってしまった。こうやって書き出すと不満が目立つが、総評としてはすごく楽しめた。フィラデルフィアという街を守るご当地ヒーロー感もよく出ていたし。…まぁもう少し「フィラデルフィアの恥」とまで呼ばれる彼らの失態を映し出しても良かったと思うけど。
よく出来た映画とは言わないが、そこも込みで可愛らしい映画だと思う。誰にでもわかりやすい破茶滅茶な娯楽映画。とかく難しくなりがちな近年のスーパーヒーロー映画だが、このくらいのいい加減さが本来の姿だと思う。
なんというか、ジャンク感満載の本作だが、この感覚をDCは大切にし続けて欲しいと切に願う。
※主演のザッカリー・リーヴァイはトランプ支持者になり、ワンダーウーマンを演じるガル・ガドットはイスラエル支持を表明…。そりゃまあ個人の思想は自由だから別にいいんだけどさぁ。
「高く強固な壁とそれに打ち砕かれる卵があるなら、私は常に卵の側に立つ」とイスラエルの地で言い放った日本の作家の方が、私にはスーパーヒーローに見えますね。
※※シャザムの日本語吹き替え声優が、菅田将暉から宮野真守に変更👏
いや本当に前作の吹き替えは酷くて聞いてられなかったもん。あそこまで下手だと逆に凄い!
やっぱり餅は餅屋。適材適所というものがあるんです。…まぁただ、本作のレイチェル・ゼグラーの吹き替えは酷かったけど。人気声優かなんか知らんが、アニメ声で洋画の吹き替えをやられるともの凄く違和感がある。アニメでも大活躍の戸田恵子さんとか緒方恵美さん、三石琴乃さんなんかはちゃんと吹き替え用の演技をしている訳だから、そういうのはちゃんと見習って欲しい。
共感を有り難うございます。
一つ一つ、おっしゃる通りですね。
ふぃらでるふぃあ防衛隊は、分かりやすい東映スーパー戦隊だけれど、はちゃめちゃで、それがまた楽しめる感じに繋がっていたのだと思います。
神様も、ほぼほぼ戦闘員の一人に過ぎないです。