「ダークで終末観一杯なのに、とにかく賑やか」BLOODY ESCAPE 地獄の逃走劇 Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
ダークで終末観一杯なのに、とにかく賑やか
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赤茶けて荒んだ、かなり濃ゆいディストピアを味わえるのでは…と言う期待で観賞。キサラギが草木も生えない岩山と砂ばかりの荒野を抜けると、イルミネーションに満ちた歓楽街である歌舞伎町に着く。訳ありのキサラギが一瞬身を沈めたここは、しかしノットディストピアではなく、夢を奪う者は掃いて捨てるほど居ても、夢は萎縮してどこにも見当たらない。
改造人間にされたキサラギは美しい姿形と反比例するように、もはや生には拘りがない。死ぬまでの時間をただ削るため、駆け抜けるように生きている。
ところが押し付けられた少女を護るために、ひと時、生きる意味を持ってしまう。少し鬱っぽく照れくさいような表情に変わったキサラギを、吸血鬼とヤクザの二つの主観的存在(身勝手な者たち)が狙って三つ巴の闘いが始まる。そこに、エクアたち逃し屋の客観的存在(醒めてる奴ら)が絡んでくる。
そうしてヘビーな銃器やレーザーガンに混じって、ドスが対等に戦ってしまう。何も関連作などを知らなかった私にとって、世界観が分かりにくかったのは事実ですけど、熱い怒号と恐喝の呪文の中で繰り広げられた「タマ取り」だけでも面白かった。だから、ヤクザにも強力なキャラクターが居てもよかったかと。
ルナルゥが目指すヨコハマの煌めきが逃走劇の終盤を飾って、しかしあの街に救いなどほぼないだろうことは、キサラギや逃し屋たちの誰もが分かっている。昔々の美少女っぽく安堵の吐息を漏らすルナルゥの明日はどちらか…。
ところがこのルナルゥが、肝がめっちゃ据わっているものだから、簡単には挫けない。活劇&逃走劇は果てなく続くのでしょうね。
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