「同姓同名でラッキー」チェルノブイリ1986 bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
同姓同名でラッキー
チェルノブイリ原発事故です。福島第一原発の構造とは違い、圧力容器や格納容器に相当する丈夫な構造を持たないチェルノブイリ原発では、爆発によって原子炉上部が壊れ、原子炉の燃料そのものが飛び散ってしまいました。燃料を包んでいる容器のジルカロイ合金と水蒸気が反応して水素ガスが発生し、これが原子炉建屋に溜まって三つの原子炉建屋で次々と水素爆発を引き起こした福島とは、根本的に違います。
と言うか、恐ろしすぎる、と言うしかないチェルノブイリの事故。
映画は、更に水蒸気爆発を引き起こす事を回避すべく、命懸けで排水作業に向かった男たちの物語り。当時の防護服の貧弱さに恐怖を覚えます。また、原子炉が爆発した原発で、普通に消火作業を行っている消防士の姿は衝撃的。演出上の理由からか、上空からの鉛の投下シーンなどはありません。相当の人員が現場に動員されていたはずですが、数の物足りなさはあります。命懸け、とは言っても、主人公が志願した理由は、息子の治療のためと言う、打算の部分もあります。これが日本も含む西側諸国や中国を除くアジア各国なら、純粋な使命感からの志願者がポツポツ出て来そうなもんですが。そこが旧ソ連、って事でしょうか。
映画の製作と本国での公開は、ロシアのウクライナ侵攻前。この映画、現場で身体を張ったのはウクライナ人。モスクワは悪役、とまでは行かないけれど血の通わない官僚組織的に描かれ情報隠蔽体質もチラホラ。
何か、ちょっと皮肉に感じてしまいました。
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