「家族の肖像」ジェーンとシャルロット penさんの映画レビュー(感想・評価)
家族の肖像
音楽・ファッション・映画とフランスのイコン的な存在だったジェーン・バーキン。41歳のときのゴダールの「右側に気をつけろ」で、木漏れ日をまっすぐ見つめる表情や目線が、ああ美しいなと思いました。
今回その娘シャルロットは、フランスではその瑞々しい演技からフランス人みんなの娘とまで言われて愛された14歳のときの「なまいきシャルロット」から17歳のときの「小さな泥棒」まで一貫して母のいない不安定な思春期の娘を好演していたことに気づきました。が、その根っこには、両親の離婚や母親の芸能活動故に寄宿舎に入っていたという事実が、彼女に父母に対する何かの欠乏感と不安感、距離感の土壌となり、それが、役柄に反映していたのかもしれないと今振り返ると思います。
家族の関係はいつもどこかにやっかいなものがあるものですが、シャルロットにとって、父と母との距離を縮める唯一の手段は、父監督・父子共演の父子家庭を描いた「シャルロット・フォーエバー」にしても、父死別の中で母子を描いた子監督・母子共演の本作にしても、結局「映画」という口実しかなかったのかもしれません。そう考えると芸能一家の特権というよりは、むしろ縮めたいけど容易に縮められない距離感を特に感じさせてむしろどこかもの悲しく思えたりします。
とにもかくにも、カメラの力を借りてでも、最後にお二人が対話できたのはとても良かったと思います。そして日常の会話の中に、揺れ動く二人の感情や父母と暮らした家族の幸せな思い出の輝きがとてもきれいに描かれていて、二人の中にあった心の中のモヤモヤが完全ではなくとも、大分整理されたのではと感じました。それが海岸での素敵なシーンに繋がっていたように思います。多分「シャルロット・フォーエバー」と本作はシャルロットにとって二本ではじめて完結した「家族の肖像」だったのではないかと思います。
親日家でもあったジェーン・バーキンのご冥福と、大女優にして初監督にも踏み出したシャルロットの、今後のご活躍をお祈りしたいと思います。