劇場公開日 2022年2月26日

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「いま、劇場に足を運んで観るべき作品。見逃さないで。」牛久 だい茶さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0いま、劇場に足を運んで観るべき作品。見逃さないで。

2022年4月4日
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圧倒的に「ちゃんと」つくれば、記録すれば、そしてその時に対応していれば、歪んだ国や教養の無い権力は何も言えない。陰でコソコソするだけだ。そこに反知性が吠える余地は無い。歴史を改変しようとするような異常な動きも抑えこめる(はずだ)。

この映画を観てあらためて感じるのは、やはり暴力や差別や戦争に立ち向かえるのは、知性と芸術、つまり頭と心なのだなという気持ち。冷たい雨の降り続くなか、終映後にトーマス・アッシュ監督と少しだけ立ち話をする機会を得たが、この映画がもっと大きな映画館で上映されもっとロングランし、ひろく宣伝され後には無料で配信され、そしてちゃんと作家にもクルーにも配給にもきちんと儲けが出るような世の中になってほしいと強く思った。

「隠し撮り」という手法が妙に取り上げられるが、これは覗き見をしたり犯罪まがいの行為をしているわけではまったくない。知ってしまった暴力に、気づいてしまった理不尽さに、人間が立ち向かうための力強い一歩なのだと思う。観客や批評家やジャーナリズムがこれを応援しなくてどうする。この映画は、怒りや勢い(だけで)つくられたドキュメンタリーではない。構成も編集も秀逸な、これは力強い「作品」だと思う。必見。

だい茶