「自分を大切にして生きることの難しさ」生きる LIVING yookieさんの映画レビュー(感想・評価)
自分を大切にして生きることの難しさ
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黒沢明監督「生きる」のイギリス版リメイク。
黒沢監督のオリジナルは見れておらず比較できないが、多くの人が原作への敬意が感じられる良作と評価している通り、とても優れた作品だった。日本生まれイギリス育ちのカズオ・イシグロの脚本によるところも大きいだろう。
1953年のロンドンが舞台である本作のオープニングは、当時の実録映像から始まり、映画の舞台へとシームレスにつながっていく作りで、古き良き時代のロンドンに一気に引き込まれていった。とは言え、ただの回顧主義的な話にとどまらず、現代の私たち、もっと若い人たちにも響く余韻がある作品だったと思う。
余命宣告を受けた公務員一筋の主人公のウイリアムズは、バイタリティに溢れる若手社員のマーガレットの生き方に感銘を受ける。でも彼女は決して誰かを元気にするつもりなんかなくて、ただありのままに自分を大切にして生きているだけなのだ。それって簡単なようでいてとても難しいことのように感じた。私は、私が後悔しない人生を送れているだろうか、今からでもそういう生き方はできるだろうか。
主演のビル・ナイの憂いある表情やハットを被った佇まいに、何故か他界した祖父の面影が重なり、ホロリと涙してしまった。
黒沢版オリジナル作品も見たい。
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