「Kurosawa meets Ozu」生きる LIVING shantiさんの映画レビュー(感想・評価)
Kurosawa meets Ozu
黒澤明監督作品のリメイクだが、雰囲気、トーン、映像と丸で小津安二郎のオマージュである。オマケに主役のビル・ナイは笠智衆に面影が似ている。内容はオリジナルのプロットを忠実に踏襲しつつも、場面構成とオリジナルに足りなかった演出を付け加えて、オリジナルに劣らない素晴らしい出来映えとなっている。カズオ・イシグロのセンスが見事に結実されているようだ。「いのち短し恋せよ乙女」をスコットランド民謡「ナナカマドの歌」に変えたのも、秀逸である。過ぎ去ってしまった美しき日々を歌でまとめる手腕には全く脱帽である。細かな説明は控えるが、盗られた山高帽子の代わりのモダンな中折れ棒子が主役の心境の変化を映像だけで見事に語る。日本人がもし、このリメイクをしたならば、下手くそな売れっ子タレントを使った上に、恐ろしく陳腐で全くの駄作しか作れなかったのは想像するに難くない。最早、これだけ練られた脚本と映像はテレビ主体の文化的にも堕ちた日本では作れない。鑑賞後の感動が直様、暗澹たる気分させられるほどの秀作であった。
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