「静寂で優しく、それでいて力強い作品」生きる LIVING あささんの映画レビュー(感想・評価)
静寂で優しく、それでいて力強い作品
物語で印象に残ったもの。
帽子と傘。
ウォータルー駅、役所、雪景色の公園…。
“死”というものに直面した時、人は何を思い、何をするのか。
物語はウィリアムズの部下・ピーターが電車に乗車するところからスタート。役所勤めのウィリアムズが余命宣告を受け、ゆっくりと物語は進んでゆく。
余命宣告を受けたその晩、ウィリアムズの前に人生で幸せだった瞬間が次々と浮かんでくる。
自分のルーツであるスコット民謡を歌うシーンには目の奥が熱くなった。
はて、自分が余命宣告されると同じようになるのだろうかとか、いろいろ思いを巡らせたり…。
働くとは、恋をするとは、生きるとは…。
ウィリアムズの生き様を通して、観る人たちはそれぞれどう考えるのだろうか?いささか哲学的な作品でもある。
絵が美しかったなぁ。特に最後のシーンはため息が出るほどに。
海辺のリゾート地のシーンも個人的に好き。
生命力に溢れたダンサー、マーガレット…。
静かに涙が溢れる作品です。
今晩は。
私は、一緒に働く仲間には”自分の名を残す仕事でなく、組織発展のための仕事をしよう。”と常々言っていますが、今作とオリジナルを見ると”人間は何のために仕事をしているのかな”という根源的な問題を考えます。45歳を超えると人によっては今作の主人公の様に先が見えてしまい、イキナリしょんぼりする人も結構います。
今作とオリジナルが素晴しいのは、死を目前にして自分が生きた証を残すためではなく、生きている実感を感じるために市民の為に奔走する主人公の姿だと思います。ここには、確かなる人間性肯定の基本思想があると思います。ビル・ナイは元々素敵な英国俳優ですが、今作品は彼の代表作の一品でもあり、日本人としては黒澤監督の力量が改めて世界に響いた点で誇らしいと思った作品でした。では。
あ、返信は不要ですよ。