「【見方が変わる映画】」名探偵コナン ハロウィンの花嫁 てっぺいさんの映画レビュー(感想・評価)
【見方が変わる映画】
主要人物・降谷零の、殉職した4人の同期との絆が描かれる原作が、本作で涙を誘う。昨今の世界情勢も、映画の見方を変える。アニメ作品ながら、側面の要素で見え方が深く変わる一本。
◆トリビア
○ TVアニメは2021年1月に25周年、同年3月に放送1,000回を達成した。
○ 「anan」表紙に降谷零が登場。男性アニメキャラクターのソロ表紙は史上初。
○ 小嶋元太と高木刑事の声優は同一人物の高木渉。高木刑事の名前も声優の名前からつけられた。
〇前作「名探偵コナン 緋色の弾丸」は公開3日間の興行収入が22億越えの過去最高を記録したが、コロナの影響でシリーズ初の100億点突破とはならなかった。
○ 高木刑事と佐藤刑事の結婚式から本作は始まるが、作者は過去のインタビューで「映画で2人を結婚させようと思ったが、原作でできなくなるのでやめた」と語っている。
◆関連作品
〇「名探偵コナン緋色の弾丸」(’21)
シリーズの前作。ラストでは松田陣平の声で「お前ら、出番だぞ!」。ツタヤレンタル中。
○「名探偵コナン」アニメシリーズU-NEXT配信中。
・「揺れる警視庁1200万人の人質」(第8シーズン304-305話)
佐藤刑事と松田刑事の関係、萩原刑事と松田刑事の関係が描かれる。
・「命を賭けた恋愛中継」(第18シーズン681-683話)
伊達航(だて・わたる)と高木渉(たかぎ・わたる)の「ワタル・ブラザーズ」の関係性が描かれる。
・「裏切りのステージ」(第22シーズン866-867話)
諸伏景光と降谷零(安室透)、赤井秀一の関係がわかる。
○「名探偵コナン警察学校編 Wild Police Story」(コミック・上下2巻)
警察学校組の青春時代。各電子書籍購入可。
◆概要
劇場版シリーズ25作目。降谷零と、すでに殉職している松田陣平、萩原研二、伊達航、諸伏景光の4人を含めた、通称「警察学校組」と呼ばれる5人がストーリーの鍵を握る。
【原作】#青山剛昌「名探偵コナン」
【監督】「ハイキュー!!」満仲勧
【声の出演】江戸川コナン=高山みなみ、毛利蘭=山崎和佳奈、毛利小五郎=小山力也、安室透=古谷徹、高木渉=高木渉、佐藤美和子=湯屋敦子、エレニカ・ラブレンチエワ=白石麻衣
【公開】2022年4月15日
【上映時間】111分
【主題歌】BUMP OF CHICKEN「クロノスタシス」(TOY'S FACTORY)
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◆以下ネタバレ
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◆謎解き
降谷が首輪爆弾をかけられ、警視庁前でロシア人が炎上し、松田刑事の名刺が見つかり、謎の暗号が残される。全編を通じて次から次に謎解きのヒントが落とされ、謎が深まりつつ答えに少しずつ近づいていくテンポの良さ。見ていて流石に飽きる事がなかった。
◆絆
警察学校で教官を救った時のように、土台になる伊達。爆弾を止める事ができた松田が言った「墓参りのお礼かね」。爆弾犯を撃った諸伏や伊達の連携も素晴らしかったし、少年探偵団がシーツでコナンを受け止めたのも、警察学校で諸伏を教場の旗で受け止めた四人と重なる。その警察学校組がコナンにラストの解決策のヒントを与えていた、その事を知った降谷の表情。同期4人をみな失ってしまった降谷が、コナンの策にまだ生き続ける4人を見たようで、あの回想シーンはとても胸が熱くなった。
◆ダブル
前述の通り、映画で2人を結婚させようと思ったが、原作でできなくなるのでやめたという作者。結婚式がフェイクなのは何となく予想できたが、高木刑事の葬式には一瞬ドキリ。事件起きまくり、殉職しまくりのコナンシリーズの頭もあり少し虚をつかれたが、無事でホッとした笑。いつもキスシーンを誰かに見られてしまう佐藤高木カップルにはこれからも注目したい笑。ダブルという意味では、佐藤刑事が花嫁と見せかけて、プラーミャという本作の1番の黒幕こそがまさに“ハロウィンの花嫁”だった事も、脚本の素晴らしいところだった。
◆ロシア
第23作『紺青の拳』はシンガポール、第24作『緋色の弾丸』はアメリカ、そして本作ではロシアが舞台のひとつ。現在のウクライナ侵攻が頭にあるからこそ、プラーミャやエレニカの民間部隊が、製作側の想定以上に恐ろしく見えたように思う。映画が生き物のように時代情勢によって見え方が変わる、そんな事を改めてアニメ作品から感じてしまった本作でした。次回は灰原哀が主役か。楽しみにしたい。