「親と子への教訓 言葉にしないと分からない人もいる 人や自分と向き合うこと」冬薔薇(ふゆそうび) MIDORIさんの映画レビュー(感想・評価)
親と子への教訓 言葉にしないと分からない人もいる 人や自分と向き合うこと
父と子の物語。古典的でシンプルなメッセージを持った映画の教科書的作品。解りにくい、つまらないと感じる人がいるとしたら、主人公が最初から最後まで何も分かっていない顔(もちろん演出、演技で)をしていて、一度も目の色変えて「本気」になる場面がなかったからだと思う。この作品では主人公の心中はよく分からない。というかこの主人公は本当に何も分かっていない(分かろうとしない)、見ていて苛立ちしか覚えない人物だ。
そしてその父親もまた息子と向き合おうとしない。面と向かっては言えず、最後に思い切って息子に電話をかけ「父親っていうのはそういうもんだ」と言うが、結局息子には何も伝わらなかった。
主人公は始めから最後まで「本気」で人や自分と向き合うことを一度もしなかった。
それは人も自分も大事にしてないこと。
向き合うべきものに向き合わず、本気にもならず、ヌルヌルと生きてきてしまった人たちは、ある時にふと、なぜこうなってしまったのかともう後戻り出来ないほどに過ぎた時間に気づき、愕然として背すじが凍る思いをするのだろう。
主人公はまだ若い。けれどぼんやりとしていたらあっという間に歳を取る。
まだ変わること、変えることは出来る。
監督の強いメッセージを感じる。
この何も分かっていない役を演じた伊藤健太郎さんは本当にいい役者だと思う。
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