「うーん解釈違い…」バズ・ライトイヤー 思いついたら変えますさんの映画レビュー(感想・評価)
うーん解釈違い…
一本の映画として出来が悪いとは言わない。むしろバズのことをよく知らない人はきっと手放しで拍手できると思う。
つまり逆に言えば…って事で。
本作の主人公・バズ・ライトイヤーは所謂オールマイティなスーパーヒーローというよりは、リアルな宇宙飛行士の延長線上にある地に足ついた職業の人物だ。勿論ヒーロー然とした勇気と優しさ、ちょっとの破天荒さは持ち合わせてるが、彼と仲間が宇宙を縦横無尽に大活躍するようなエンタメ映画…というほどのトーンではない。お馴染み腕のレーザーや背中のウイングは決して彼のための特注品などでなく、あの白と黄緑のスーツ自体、彼が所属する組織で支給されていた量産型だ。そして作品の大部分を包み込むのは彼のナイーブな問題、ウェットな空気だ。
果たしてこの映画をもとにあの低年齢向けのギミック満載トイが生まれるだろうか…だって思い出してほしい。トイストーリーで流れてたバズのCM、「バズ!ライト!イヤー!」みたいなテンションで売ってたんだよ?映画が大人ぶればぶるほどオモチャの方のバズが珍商品に見えてくる逆転現象だ。例えるなら子門真人がカバーしたヒーロー番組丸出しのスターウォーズの歌とか、NARUTO×フォートナイトのコラボでネタにされた、はしゃぎ回るサスケみたいな…これはちょっと違うか。
さらに言うと、第一作「トイストーリー」は「公開当時(1995年)の現代」を舞台にした映画だと僕は思っていた。
これはVFX的な意味でなくとも、とてもアンディが小さい頃=90年代半ばに生まれた作品には見えない。メインヒロイン(祖母の方)がレズビアンの家庭を築く描写は明らかに近年活発になった要素だし、ジョークの毛色もなんとなくマーベルブーム以降のそれだ。
時代的なことは、今の目で見応えのある新作映画にならないから仕方がないとは言える。「ウッディーのラウンドアップ」みたいな劇中劇ではないのだから、クラシカルにとはいかないのかもしれない。
ただそれを抜きにしても、各種装備の詳細やザーグの正体など諸々の設定の「ずらし、外し」はトイストーリーシリーズで出たバズ「が」下敷きにあってやった事で、この映画が主張している順番とは逆だ(メタ的に言えば順番が逆な事自体は当たり前なんだけど)。結果的にこの映画の公開から未来にあたるトイストーリー2でのやり取りと食い違いが生まれてる。結局「現代風の解釈を後からしたリブート映画」にしか着地できない。
そもそもの話、バズはウッディーと喧嘩した時Mr.スポックの挨拶をしたり、2001年宇宙の旅を意識したであろうギャグもあったし、宿敵ザーグとの関係は言わずもがな。宇宙映画のパロディを端々でサービス的に繰り返してきた。オリジンの映画を生み出す事自体難題だったのではないだろうか。
じゃあ結局、僕は企画自体が不満だったのか?
でも先に言った通り、一本の映画としては破綻がないし、ストーリー自体は悪くない。ただ前提が全然信じられないというだけだ。
だったら逆にだ、それこそ「遠くない未来、大人になったアンディが子供を連れて、かつて憧れたヒーローの完全新作映画を観に行く」なんて導入ではダメだったのか。その方が何の矛盾や文句も感じずすんなり見れた気がする。