「無限の彼方へ、さあ。」バズ・ライトイヤー 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
無限の彼方へ、さあ。
スペースレンジャーのバズはとある惑星を訪れるが自分のミスによって1200人もの乗組員の乗った宇宙船を墜落させてしまう。
燃料を損傷し、乗組員と共に惑星から出られなくなってしまったバズ。
自責の念から自分の身を賭けてこの星を抜け出す方法を必死に模索するバズだったが、時間だけは刻々と過ぎていき…
1995年、アンディが買ってもらったおもちゃのバズ・ライトイヤー。
そんな彼の主演作、原点の物語。
有言実行!
無事にアジア(映画のエンドレス)から脱出し、宇宙へ。
トイ・ストーリー自体は4で多分区切りは付いているけれど、その後に登場キャラクターの過去を掘り下げるのは、ファンとしては正直期待半分不安半分だった。
それに夏休みとあって子供が多い。嫌な予感がする。
結論から言うと、ハイパースピードへ到達する大満足の映画体験だった。
時間、家族、仲間、そして故郷。
感動要素がふんだんに組み込まれもうぐっちゃぐちゃで(褒めてる)、恐らく今年1番泣いた。
「おばあちゃん」ってワードが出てくるだけで涙腺緩むから辞めて欲しい。
所ジョージを敢えて鈴木亮平に変えてるのも良い。
こんな映画観たらアンディが欲しくなるのもわかるよ。
実際手にしたらおっさんの声だったっていうのは多少ショックかもしれないけど…
今回は上に挙げた時間、家族、仲間、故郷の四つのテーマに分けて書いていく。
まずは時間。
まさか相対性理論まで取り入れてくるとは…
インターステラーを彷彿とさせるところも涙をそそる要因の一つかもしれない。
ハイパースピード到達のところなんか完全に2001年とかインターステラーのオマージュだったし。
アリーシャ親子の継承は映画館に映画を見に来た親子の関係性とも重なる。
当時ウッディやバズに憧れた子供たちは今大人になった。
そして中には子供を持った人もいるかもしれない。
そんな親から子へ引き継がれる物語は、どんなに時代が変わっても色褪せないおもちゃたちの感動の物語と強くリンクするはずだ。
サンドイッチの食べ方は変わったかもしれない。
でもサンドイッチはちゃんとそこにある。
挟み方が変わっただけで食べ物を食べ物で挟むという概念は変わらない。
トイ・ストーリーの普遍的なテーマ「時の流れ」。
1、2、3、4とはまた違った形で、今回は宇宙という時空を超えた旅を通して私たちに教えてくれる。
次に家族。
家族の形とは?
あっさり描かれていたけど、アリーシャは同性婚だったし、彼女は黒人だった。
最近のディズニーはポリコレを少し意識しすぎなのが気になるが、今回は本当にサラッと当たり前に描かれていて少々驚いた。
数十年前じゃ絶対に考えられないことだ。
実際中東の国など一部では上映禁止になっているらしい。
この件にしろ相対性理論にしろ「おばあちゃんとヤった?おぇ〜」にしろ、子供にしてみたら?マークが浮かびそうな大人な内容。
それはさておき、ある意味バズはアリーシャにとって家族のような、いや、家族だったんだと思う。
その点、同性婚は都合が良いのかもしれない。
ポリコレと言ってしまえばそれまでだけど家族の形が多種多様になる今だからこそ描かれるべきなんだと。
アリーシャとの日々が描かれるあの数十分間は本人たちにとっても数日間という人生の中ではとても短い時間。
しかしそれは家族と過ごしたと言えるほど、長く濃密な時間だった。
ソックス可愛かったよ〜!
最初、一瞬だけ面倒臭そうとか思ってごめんなさい。
周りがポンコツな分ソックスの有能さが際立ってて最高の相棒だった。
ペットは家族枠だと思うので一応ここに書いときます。
そして仲間。
ポンコツ新人たちの成長っていうのはよくある設定だけど、今作のポンコツ新人は一味違う。
ポンコツの域超えた迷惑しかかけない奴ら。
新人って確かにキラキラしてるダイヤモンドの原石みたいなんだけど、どうしても足手纏いになっちゃったりする。
でもやっぱり原石なんだと思う。
可能性を無限に秘めてる。
この作品の彼ら彼女らは完全に成長はしきってない。
でも確実にそれぞれの適性を発揮して、最後にはちゃんとキラキラ輝いていた。
バズ自身もトラウマとなっている新人という存在を厄介者から仲間として受け入れる成長が描かれていて良かった。
最後に故郷。
罪の意識をずっと抱え続け、この星から脱出することだけ考えていたバズ。
たった一度のミスによる不時着で結婚し子供を持ち生涯を閉じたアリーシャ。
そしてその子供のイジーはこの星しか知らない。
この星には多くの人の人生がある。
宇宙へ何度も飛んだ彼だからこそ感じにくく受け入れづらかったのかもしれないが、そんな彼がこの星が故郷なんだと受け入れるシーンは胸アツだった。
住めば都と言うが、故郷についても考えさせられる内容でなかなか深かった。
ザーグの登場に沸いたが、ザーグの正体にはほんの少しだけ納得がいかない。
それでも魅力的なキャラクターとよく練られた脚本によってトイストーリーシリーズを観た後でもしっかり楽しめる内容になっている。
なんか続編もありそうな雰囲気だけど、個人的にはウッディ版が観たいな。
さて、冒頭の心配の一つだった子供の多さ。
嫌な予感は的中、上映中に喋るガキがうるせえ…(以下自粛)
親御さんも注意してたから見逃してやろう。