「映像美は素晴らしかったのですが。」ホリック xxxHOLiC nao68さんの映画レビュー(感想・評価)
映像美は素晴らしかったのですが。
原作ファンです。映像美はさすが蜷川監督なので素晴らしかったように思います。
また衣装も非常に凝っていて、原作の世界観を鮮やかに表現していました。
マルモロは子役を使えなかったんだろうかという不満はありますが、キャスト・役者さんにもおおむね満足です。
やはり脚本や構成に問題があるように思います。まず根本的に「何がどうなる話なのかわからない」です。流れとして「運命を諦めて生きてきた四月一日が、大切なものを取り戻し、運命を切り開く話」に持っていきたかったのはわかるのですが、侑子さん・百目鬼・ひまわりちゃんとの関係の描写が薄く、この三人の関係を通して大切なものを取り戻すという構成になっていませんでした。なぜ女郎蜘蛛が四月一日を狙うのか、百目鬼家にある封印された魔物は何なのか、最後侑子さんはなぜ自ら封印されたのか、すべてよくわからなかったです。「雰囲気映画」になってしまったなという印象です。
さらに、人とのかかわりを避けて生きてきた四月一日が、なぜ急に百目鬼ひまわりとだけ仲良くなったのか等のこまかい変化についても説得力がなく、よくわからないままでした。
「自ら選ぶ」というのはHolicにおいて重要なテーマですが、そのテーマに至るエピソードがほとんどないため、クライマックスでいくら叫ばれても、重みがまったくありませんでした。オチの四月一日が後を継ぐラストに至っては、原作を見てない人間には意味不明な展開だったのではと思います。一週間ミセで働いただけで、どうやって後を継げるのか。
侑子さんとの信頼関係を築くエピソードすらほとんどないのに、あそこで感動は難しいです。
原作を読んでる身からすると、原作にちらばってるテーマやエピソードをざっとさらってはみたものの、広く浅くになりすぎて意味不明なダイジェストになってしまったと思います。
これなら「 真夏ノ夜ノ夢」みたいに、独立した話として完成させた方が良かったのではないでしょうか。