「SMフッド作品ですね。」夕方のおともだち　バリカタさんの映画レビュー（感想・評価）

原作未読で鑑賞です。なかなかの倒錯っぷりなテイストなので敬遠されやすいんだろうなぁとか、観る人選ぶんだろうなぁ・・・って思いますが、そんなことは杞憂ですよ。まさに夕方の「おともだち」。性別ではない、血縁でもない、とある夕方以降のお付き合いで始まった人間の繋がりが生む物語。そんな言葉ないですが「SMフッド系」です。

言葉や態度で伝えられる、分かり合えることもありますが、体で交わすことで分かり合えることも、伝わる心情も、それでしか伝えられないこともあるんだと思います。（城定監督作品のピンク映画見て学びました）言葉じゃなくてプレイで、会話じゃなくてセックスで交わす気持ちの方がより明確に伝わるってことはあると思うんです。結局、生々しいもんですよ人の心なんてもんは。欲望と直結する行動だからこそリアルに伝わるんじゃないかなぁ？だから、とっても鋭利な刃物で誰かの心を傷つけることもあるでしょう。しかし、伝わった時にはソウルメイト級の繋がりを生むのかもしれません。

本作はそれが女王様と奴隷が存在するSMプレイだっただけなんです。自分や生きがいを見出すことが痛めつけられることだっただけなんですね。そんな方々の切なくって温かい大人の心探しの物語だと思います。描写はハードですが、展開はとってもハートウォーミング。村上淳さんの怪演がとっても良いです。不思議なんですがもがく村上さんが哀しくもユーモラスでキュートなんです。ただただ彷徨っている心が見えるのです。そんな彼の一挙手一投足が気になって行きます。彼が見つけるものはなんなのか？見守りたい気分でどんどん引き込まれて行きます。

とっても不思議なんですが見終わったら妙に爽やかです。青春映画を見終わったような気分。見てよかった。ハードな描写はありますが、大事な描写ですから食わず嫌いにならず見ていただきたいなぁって思いました。

全体的にハードな描写はあるものの、コメディタッチの演出ですからホッコリしながら楽しめます。ブラックユーモアも散りばめられてます。烏丸さん演じる母親のくだり、最高ですよ。そうか！そうだったのか！？だからヨシオと母親の関係は成立していたのか！って。なかなかです。

いやぁ、面白かった！