「胸を締め付けられる葛藤」スワン・ソング Yukさんの映画レビュー(感想・評価)
胸を締め付けられる葛藤
近未来。不治の病となった男。残される家族の為に実験に申し込む。自分が同じ境遇にあり、こんな選択肢があれば実行するだろうかと誰もが考える。
この実験技術や社会背景を説明するSF要素は皆無で、男の葛藤と喪失を搾り出してシンプルに観せている。未来都市やテクノロジーをこれ見よがしに描くような野暮を潔く避けているのが良い。そういうものを撮りたい映画ではないのである。
静かな湖と森の映像が美しく、死を覚悟した人と、そこに感情移入した観客の行き着く心の境地を象徴しているかのよう。最後にこんな森で密かに余生を送るのは悪くないかもしれない。
余計なディテールをぎりぎりまで削ぎ落とした脚本。人生の儚さと、いつかは来る、かけがえの無いものを失う日のことを考えさせる。
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