劇場公開日 2022年1月15日

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「結果よりプロセスが大切なドラマ」ひかり探して バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5結果よりプロセスが大切なドラマ

2022年1月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

韓国原題は、「私の死んだ日」だそうで。僕にはこちらの方がしっくりきました。なるほど!

人は何度自分を殺して生きているのかな?
言いたいことも言えず、中傷されたり、ハシゴはずされたりなんて誰もが経験していることでしょうし、不条理なことを泣き寝入りでやり過ごしたり、自分が悪いと言い聞かせて・・・納得できないけど飲み込んで、無理やりにでも前を向く。そう、たくさんのことをグッと飲み込む時人は自分を殺すのでしょう。そして何度も自分を生んで進んでいく。はて?どうやってもう一度生まれるのだろ?
自分で自分をあきらめない。自分の存在を少なくとも自身が認めることが必要なんでしょうね。もちろんそれを気づかせてくれる人たちに恵まれていればいうことありません。

韓国は男性の立場が強い社会だと思います。いや、日本も世界の国々も多かれ少なかれその傾向はあるはず。ですから男性以上に自分を殺して生きる女性は多いのではないでしょうか?挫けてしまいそうな心を支え合いながら、励ましながら、認めながら自分自身を取り戻していく女性達の姿を丁寧な物語で紡いでいく物語です。昨年鑑賞した「17歳の瞳に映る世界」を思い出しました。女性達が逞しく連携しながら自分を痛めつける社会を生き抜いていく感じが。

しかしなぁ、女性だからっててことではないかもしれませんよね。結局自分がどうしたいのか?って覚悟を持てるかどうか?ってことと、決して人生は一人じゃないってことだもんなぁ。きっときっと、辛い思いをして自分を殺してきた人は(自分自身含め)これまでを思い返したら心当たりがあるんではないでしょうか?

物語は境遇は違えど社会的な自身の存在意義が危うい二人の女性を中心に描かれていきます。とてもゆったりとサスペンスタッチで巧みなストーリー展開です。少々、都合が良い展開はありますが、人間讃歌、人生応援歌のような作品だと思いますからその辺りはとやかく言わずに元気をもらって映画館を出てもらえたらって思います。

作品の前半に結末を予想できる描写があります。(僕は気付き、正解でした)ですが、それはどうでもいいです。豊かな展開が待っていますからね。この監督が丁寧に紡ぐプロセスを楽しんでほしいと思います。なぜに上映館が少ないのか?とても疑問に思えるほどの作品です。

おすすめです。

バリカタ