劇場公開日 2022年4月22日

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「新しいんだか古いんだかわからないけどこれはこれでいい。」マリー・ミー 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5新しいんだか古いんだかわからないけどこれはこれでいい。

2022年4月30日
PCから投稿

ジェニファー・ロペスが、ストリッパーたちが男性を食い物にすることで逆搾取の反撃を企てる『ハスラーズ』後に手がけた主演&プロデュース作ということで、王道のラブコメジャンルにどんな味付けを施すのかと気になっていた。蓋を開けてみたら、主人公は大スターの歌姫という現実のJ.Loに近いキャラクターで、結婚、離婚、婚約解消が何度もゴシップネタになってきたジェニファー本人と重ねずにはいられない役どころ。それでも愛を信じますと言わんばかりに最近ベン・アフレックと二度目の婚約をしたことも、この映画の持つ能天気さに妙な説得力を与えている気がする。

セレブカップルがコンサート中に結婚式をあげるはずが、花婿の浮気が発覚して、客席にいたサエない中年男を指名してその場で結婚する……という突拍子もなさは、いかにもラブコメの世界だから許される感じはするが、その後の展開が非常に落ち着いている。誰もがそれなりに良識を持っていて、それでも間違いをしでかして、その上でちゃんと自分の気持ちにも気づけるので、出来過ぎと思われるかもしれないが、最初に大嘘をついてあとは分別でまとめるというやり方は、ムリヤリ悪人や愚人を仕立てるよりもずっと現代的だと思う。

ただ、年齢や性別からくるジェンダー的な先入観を否定する意図がどこまであるのかは、いまいちよくわからない。50代のジェニファーが自信に満ちてラブコメの主演を張って見せる風通しの良さや、50代のオッサンとは思えぬ理解度と優しさを示すオーウェン・ウィルソンのキャラの現代性などには今の映画だと思わされるが、あくまでもラブコメとしては保守的な価値観から飛び出してはいないように感じた。しかし王道のラブコメを堂々とやりますという気概は小気味よく、ジャンル物のバリエーションとしてほどよい湯加減で楽しめました。

村山章